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小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005
           (略称JPGL2005)
』発刊のご案内

2005.11.30

 日本小児アレルギー学会ガイドライン委員会編の「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005(略称JPGL2005)」が発刊されました。

 2005年11月に福井で開催された第42回日本小児アレルギー学会に合わせてJPGL2005が発刊されました。この本は、2000年4月に発刊されたJPGL2000、2002年11月に発刊されたJPGL2002以降、ガイドライン委員の34名を中心として3年間かけて議論を重ね作成したものです。
 その主なところをこの本の第18章(今後の課題)をもとに若干の追加を加え以下に解説します。

 日本小児アレルギー学会・ガイドライン委員会による小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2002(JPGL2002)が発刊され3年が経過しました。その間、喘息治療における長期管理薬としての抗炎症薬の普及・拡大は着実に進みました。その結果は喘息死亡率、発作入院数、及び長期入院児の著しい減少として表れています。
 このJPGL2005作成にあたって特に議論となったことを中心に今後の課題も含めて述べます。この課題を解決していく作業が次回のJPGLのさらなる質的アップに直結するでしょう。

※表及び図はPDFファイルです。小さな画像かファイル名部分をクリックするとPDFファイルが表示されます。表示にはAcrobatReaderが必要です。

      
1.診断と重症度分類

表3-7 (3-7.pdf)
 乳児を除けば喘息自体の診断は難しいものではありません。しかし、喘息重症度や寛解、治癒の判定に用いるこ とのできる客観的指標はいまだ乏しいのが現状です。呼気中、喀痰中の化学伝達物質、サイトカインなどの定量的分析がどこまで進むか、アレルギー性炎症の指標として使える呼気中一酸化窒素濃度測定機器の低価格化はできるか、病勢を示す新たな指標が見つかるか、などが進まなければ次へのステップアップは難しいと考えられます。
 今回、重症度分類の中の重症持続型(難治・最重症)に症状が中等症持続型で治療が最高度(ステップ4)のものも加えることにしましたが(表3-7)、このような現在の薬物療法ではコントロールが困難な喘息児を分別できる指標を開発することも強く望まれるところです。



2.疫学

 アレルギー疾患は全世界的に増加していますが、日本では喘息やアトピー性皮膚炎については上昇がゆるやかになりつつあり、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎は依然として有症率は上昇し続けています。世界の最新情報も入れて本章では解説していますが、病気の治療管理が向上したための減少か、アレルゲン(抗原)が変わってきたための増加か、生活環境や私達の側に何らかの変化が生じているための変化か、などについては情報が不足しています。種々のアレルギーに関与する物質が発見され、候補遺伝子解析も急速に進んでいますが、それがどの程度、喘息にとって正しそうかを判断するには正確で長期の疫学調査・研究が必要です。しかし、この分野は特にわが国では極端に遅れています。その対策として日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会ではそれぞれ疫学委員会を立ち上げました。また小児では国立成育医療センターが、成人では国立病院機構相模原病院がそれぞれ中核となって長期の疫学調査体制を作ろうとしています。これが有機的に結合し、毎年、データを公表できるようになることを大いに期待するとともに協力してゆきたいと思います。



3.予防

 今回、予防を一次予防(アレルギーにならない)、二次予防(喘息にならない)、三次予防(喘息が悪くならない)に分けましたが、一次予防については世界をみてもほとんど実際に応用できるデータがありません。この分野は特に小児科医が切り拓いていかねばならない将来的に重要なところですから、次回改訂のJPGLには数頁が割かれるようになっていることが私達の夢です。



4.長期管理

表9-1 (9-1.pdf)
 今回のガイドライン委員会で意見が最後まで全員一致とはならなかった分野です。特に乳児喘息では、その診断の難しさ、効果判定の難しさ、正確な予後が不明なこと(表9-1)も相まって頻回に集まって議論を行いました。
 問題を複雑にしたのはテオフィリン徐放製剤(SRT)が通常治療域の血中濃度で神経系の副作用が出るのではないかという疑問が一部の小児救急や小児神経の分野の小児科医から出されたことでした。現在、今までのデータの分析と、はっきりさせるための研究プロジェクトの構築を急いでいますが、JPGL2005の発刊までに一定の結論を出すには至りませんでした。しかし、過去10年間、200例の副作用報告の多くが「乳児の発熱時」で、かつ「血中濃度も比較的高い」ところから、JPGL2005ではJPGL2002に比してのSRTの位置を若干下げ、特に乳児では注意喚起をしました。また、けいれんを起こしやすい児やてんかんを有する児は他の治療法を選ぶようにしました。これにより、いわゆる“テオフィリン関連けいれん”が減少してくるかどうかも、この問題の着地点がどこかの一資料となるはずです。また、今までの副作用報告症例数の地域差、病院差、専門分野差が極めて大きいことから、乳児の喘息の治療に精通した医師は基本的には従来と変わらず使えるようにしておき、「乳児」、「高熱」、「神経疾患合併」、「過量」に関し、JPGL2002よりさらに注意を払うよう書き込みました。SRTの位置を下げることにより、基本的に長期管理薬は吸入ステロイド薬(ICS)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、吸入抗アレルギー薬で、あとは長時間作用性β2刺激薬(LABA)やSRTを足すという治療となりますが、この治療法で、まだICS吸入液の発売されていない日本の乳幼児において、十分にコントロールを行い得るかどうかは今後、注意深く監視していかなければなりません。
 さらに、ICSが今以上に用いられることが確実視されるので吸入手技についてはJPGL2005では独立した章(第10章)で吸入器、吸入補助器具も含めかなり詳しく述べています。これらについても低年齢児での正確なデータを作っていく必要があります(図9-4,図8-1,図8-2)。
図9-4 (9-4.pdf) 図8-1 (8-1.pdf) 表8-2 (8-2.pdf)



5.急性発作への対応

 先に述べたSRTの問題と同様、アミノフィリン注射についても議論が沸騰しました。副作用報告では乳児に多いことから、この年齢では「喘息治療に精通した医師」、「入院での治療が望ましい」などの縛りを当面、入れることにしました。
 JPGL2005のこの対応により、ステロイド薬内服・注射や気管支拡張薬のイソプロテレノール持続吸入が増加することが予測されています。ステロイド薬は特に内服で乳幼児に用いやすい(服用しやすい)剤型が喘息によく用いられているプレドニゾロンではないので、長時間作用型のベタメタゾン、デキサメタゾンにならざるを得ない点と、イソプロテレノール持続吸入の客観的データが世界的に乏しい点が、今後に残された大きな課題といえます。繰り返しになりますが、ステロイド薬の使用の増加については学会としても調査することを考えています。イソプロテレノール持続吸入の実施上の要点はしっかりと記載しました。したがって現時点の安全策の一つとして低年齢児では中発作状態での入院も「考慮」とする対応を行わざるを得ませんでした(図9-2,表7-1)。
図9-2 (9-2.pdf) 表7-1 (7-1.pdf)



6.喘息死

図17-5 (17-5.pdf)
 喘息死亡数は激減しています。特に小児では著しかったのですが、最近になって下げ止まりの様子もあり、喘息死ゼロの達成は容易ではありません。1960年代、1980年代のわが国における喘息死の大流行が二度とないように疫学上の監視を続けることと、常に「喘息では死亡することがある」ということを患者、家族、医療スタッフが念頭に置いておくことの教育・啓発のシステムをしっかり作っておくことが必要です。このことは定義の中にも「ごくまれに致死的である」という文を入れました(図17-5)。



おわりに

 JPGL2005が、以上の課題を解決していくことで進化し続けること、この内容を広く第一線の医療現場に浸透させること、医療スタッフ・患者家族・周辺社会とのパートナーシップ構築のための作業をすること、などが今後求められることです。
 日本アレルギー学会では2007年春にはアレルギー疾患治療ガイドラインを作成することになっており、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息という3大アレルギーを合併していることの多い小児を診ている私達小児アレルギー科医の積極的参画が必須です。このJPGL2005はその構成の大きな部分となるでしょう。


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