はじめましょうか (BigBrothersNo.1) 1996.4頃

 はる間近だというのに、世の中は不景気だし、不良中年の私には浮世の風の冷たさが身にしむこの頃です。
 現在ターボCに悪戦苦闘中です。ここでは私自身ターボCで焼き切れそうになっている脳細胞を和らげるための独り言です。
 BGMはジャズです。ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」が流れだしました。「ワルツ・フォー・デビー」の一曲目は「マイ・フーリッシュ・ハート」(愚かなり我が心)ですが、この曲は同題名の映画に使われました。この映画の原作者はサリンジャーだとのことですが、いま一体あの著名な作家はどうしているのやらと、この曲を聴くとふと頭をかすめます。

kaneko1.jpg  最近は金子光晴という詩人の書いたものを読んでます。読んでいるといっても、彼の詩ではなく、もっぱら随筆のたぐいです。
 30歳を越えてから、小説とは縁が薄くなってしまって、肩の凝らない随筆を拾い読みをしてきましたが、『どくろ杯』を手始めに、『西ひがし』、『ねむれ巴里』と読みました。
 これらはえもいわれぬ風格が備ったなかなかの名文で、それなりに襟を正して向かわなければなりませんが、 kaneko2.jpg 『下駄ばき対談』、『衆妙の門』、『人非人伝』などは無条件におもしろがることができます。
 金子光晴のものには、藤田嗣治が枯葉を一瞥し、さらに一筆で描いたものが、もとの枯葉と寸分違わず重なる話など興味尽きないエピソードに満ちています。頻出する猥談もかなりあけすけですが、人間の根本に触れてくる風変わりな味があります。
 『どくろ杯』、『西ひがし』、『ねむれ巴里』は中公文庫で比較的入手可能でありますし、『下駄ばき対談』(現代書館)から最近復刊されました。興味のある方はお読み下さい。
 スコット・ラファロのベースが心地好く弾みます。ビールの栓を抜きながら、これから古本屋で見つけてきた『三界交友録』を開こうと思います。



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