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中世ヨーロッパ、ジョイリー国の女領主ジレルの織なす一連の冒険もの。むしろ精神の冒険といった方がふさわしい内容です。ムーアにはこの作品と対をなすノースウェスト・スミス・シリーズがありますが、私はどちらかといえば、そちらが面白いですね。分量もジレルものの3倍ありますから、いかに作者がこのシリーズに対して脂が載っていたかの一端を物語っているように思われます。
ノースウェスト・スミスの面白さは、短編毎の道具立てが派手なこと(他のSF作品に比べればずっと地味かもしれませんが)、これを華麗な言葉の使用と、巧みなレトリックによって作品世界の雰囲気を盛り上げます。
それに対してジレルのシリーズは、テーマが暗黒神(死、悪、闇)に絞られているので、ややマンネリになっているという印象があります。そうは言っても、作者のムードを盛り上げる手腕は並大抵ではありません。
五つ短編のうち最終話は特にラブクラフトの影響が強い、あるいは連想させるように思われるのですが、もちろんそれはアイデアと、幾つかの設定のみです。この作者の特徴は観念的な語句を連ね、場合によっては相反する意味を有する単語を並置して、超現実的世界を描く点にあります。
ノースウェスト・スミス・シリーズを紹介した際にも述べたように、設定や謎は雰囲気を盛り上げるだけ、積極的に変革や解明されたりする意向のない作品です。ですが、こういう描き方もあるなあと感心させれることも事実ですね。もっともこの作品は全て1930年代のものですから、なんら新しい手法ではないのでしょうが。
装丁はノースウェスト・スミス同様、松本零士が手がけています。
by BigBrother
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