スピノザ「神学・政治論」上下巻 岩波文庫 2000.5.8

 スピノザ著 畠中尚志訳「神学・政治論」上下巻 岩波文庫 この著書の大半が聖書の吟味に費やされています。その際の手段としてとられる手法は、聖書における言語の使用法や表現法、また聖書の歴史的生成などを考慮してなされる、聖書の歴史的解釈といっていいかと思います。  これによって聖書という特別視されている対象がいたずらに人々に与えかねない神秘性、至高性は、剥ぎ取られ、解体され、そこで初めて我々に聖書の内容が共通体験として与えられ、これを真の豊かな心の糧とすることができるのです。
 17世紀という、最後の大規模な宗教戦争が行われた世紀の著作であることを思うと、スピノザの論述は、ヘラクレスの難行のような力技に思えます。ましてや、素朴な宗教心や信仰心を理性と論証という炎によって純化するスピノザの試みは、宗教や信仰の破壊ととられかねませんし、解説によれば事実そうであったとのことです。これが当時いかに危険であったかは世界史を学んだ人には周知のことです。
 明快さの極地にまで透徹したスピノザの論述には、狂気にも似た激しい熱情を感ぜずにはおれず、戦慄さえ覚えるほどです。
 しかも、それと平行して、時折スピノザののぞかせるあまりに冷徹なまなざしは、皮肉を通り越して、純粋の悪意のようにも思われます。
 思想・言論の自由の在り方を、スピノザの聖書の吟味を通じて体験することができると同時に、この途方もない知の巨人の内面の深遠を垣間見ることができるすばらしい古典です

by BigBrother  

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