ラーメン店、イニシャルトーク 2000.7.30


 某月某日、いつもの暖簾をくぐると馴染みの二人が声をかけってきた。

「名立のAへ行って来たよ」と杵渕君。中村さんはいささか苦笑い。
「どうでした?」
「生半可じゃないあぶらだった。あれだとスープはいつまでも冷めないね」
「A亭のようなラーメンですか?」
「いや、あれと違ってね、とにかく鶏ガラのあぶらがこってり浮いているんだ」
「おれはうまかった」
「若い人にはそうだろうね。ただけっしてまずいといってるわけじゃないよ」

 とラーメン談義が始まった。これまで度々話題になったてきた、S店が新たに出店したラーメン店にまず話が及ぶ。

「えらく混んでるってそうだね」
「初めはそうだったけど、今はそれほどでもないって」
「とにかく、醤油、味噌、トンコツ、塩となんでもあるけど、醤油を除いて、業務用のやつを使ってるでしょ」
「店に一歩入って、トンコツを煮出してる匂いがぜんぜんしないものな」
「とにかく、醤油ラーメンのスープがひどい」
「本店と同じ材料を使っているそうだよ」
「スープは濁ってるし、コクはないし、スープの作り方を知らないか、よっぽど手を抜いてるかのどっちかだね」
「R軒は人が入ってるってね」
「長岡のラーメンがあんまAに近いからだと思いますよ。長岡ではAのラーメンが好まれているっていっても、あんまり右へ倣えばかりだと、飽きがくるし、やっぱり本家本元に及ばないでしょ?」

 ここで本家本元のAも、以前の味に比べれば、及ぶべくもないことが言われる。

「何度も保健所から営業停止になった」
「とにかく汚かった、よくゴキブリが顔を出した」
「店に入ったとたん、ウンコくさい匂いがした」
「そうそう、あれはとにかくスープがそういう匂いを立ててたんだな」
「豚の脳みそが一緒に煮られていた」
「僕は、店が改装される直前を知っているけど、もうその頃は親父さんは人任せだったな」
「とにかく、一たんスープをすすったら、なんだこのうまさは!って驚いたね」
「昔とは違うかもしれないけれど、それでも客は多いですよね」
「清潔だよね。ほんとうに前のAのことは伝説か法螺話にしか思えないよ」
「チャーシューの質も落ちたし、メンマも変にかたいけれども、やっぱり、スープと麺がそこそこうまいからね」
「チャーシューといえば、おれはA亭のチャーシューはうまいと思うな」
「そう、あれでねぎの細切りを巻いて食べるとうまいよ」
「でもあれはあぶないよね」
「そうですね、あれほどでかいと火は通りにくいだろうし、ヘタすりゃ、腹壊しますわね」
「所々血が残ってるでしょ、だから、しばらく熱いスープの中に沈めてから、いつも食ってますよ」
「あのスープにはあの麺が最適なのかもしれないけど、やっぱり太すぎると思う」
「ありゃ、出前用の麺で、のびてまずくなるのを防ぐためなんだよ、そうした麺を使っているから、うまいっきゃ良いって言えば言えるけど、ちょっとね」
「とにかく、あそこのラーメン食い終わるちょっと前から、もう腹いっぱいで、半分無理して食って、食い終わるともう当分こなくていいって思う。でもまた来てしまうんだよね」

 こうしてラーメン好きの酔っ払いたちは、酔いに任せて言いたい放題で看板まで過ごしたのであった。

   注(この会話はフィクションであり、本文中の人名、店名は、実在の人物、またはラーメン店と一切関わりがありません)


by BigBrother  

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