末木文美士「日本仏教史」新潮文庫 2000.2.28

「日本仏教史」  「思想史としてのアプロ―チ」の副題があるように、歴史学、民俗学、文学などをはじめとした他分野の成果も援用しつつ、日本における仏教推移を思想史の観点から叙述した著書です。より正確には、日本における「仏教の土着と風化」を明らかにすることによって、「日本人として外来の思想・宗教を受け入れるとはどういうことなのか」を問うています。
 特に興味深かったのは「天台本覚思想」を手がかりに、日本の仏教を展開を論じた点でした。
 著者によれば、本覚思想とは、もとは「衆生に内在する悟りの本性を意味」し、これが次第に「『本覚』が単なる内在的な可能性ではなく、現実に悟りを開いているという意味に転化」し、「衆生のありのままの現実そのまま悟りの現われであり、それとは別に求めるべき悟りはない」となった思想だとされます。この本覚思想を著者はさらに以下のように述べます。  

     目にする一草一木、耳にする鳥や虫の声、すべて仏でないものはない。ありのまま、自然のままを尊ぶこうした考え方は日本人好みのようであり、本覚思想は仏教の枠を超えて、中世の文学美実・芸能から神道の思想におよぶ広範囲の影響をおよぼすことになる。
     しかし他方、修業は不要、凡夫は凡夫のままでよい、ということになると、きわめて安易な現実肯定に陥り、危険な思想といわなければならない。(160ページより)

 この本覚思想を手がかりに論じられる、第V章末法と浄土、本覚思想、第W章鎌倉仏教の諸相、の各章は面白かったですね。
 あと漢訳仏典を通しての外来思想の受容についての著者の考察も示唆に富んでます。

by BigBrother  

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