手塚治虫「ぼくはマンガ家」毎日新聞社
2001.11.21
1969年に出版された手塚治虫さんの自伝です。
手塚さんは1928年に生まれ1989年に逝去されたわけですから、当時40に手が届いていたわけですね。
「トキワ荘青春日記」が予想外におもしろかったので、ちょっとした期待があったのですが、今回も大当たりでした。
本当に今更ながら手塚さんの天才には驚きます。まだまだまんがが子供だましのものと見られがちだった時代に、まんがに新しい手法やテーマを積極的に取り入れて、まんがは森羅万象を描けるし、描いていいのだとした功績も凄いですね。
手塚さんは先覚者としての自覚が大であったので、それだけまんが家仲間に対して強く意識していたのですね。同時代のまんが家たちへの強い対抗意識が吐露されることで自伝ははからずも興味深いまんが史となっています。手塚さんが語るまんが家やまんがの動向が生き生きと伝わってくるのは、トップランナーとしての誇りと、背後に迫りくる足音を複雑な気持ちで聞いていたからだと思います。
ところで、1969年当時はかなり精神的にも追い詰められていられたようです。自伝の後半に、手塚さんのまんがが教育上好ましくないとPTAから非難を受けたとか、批評家から時代遅れだといわれたとか、アシスタントに自分の作風の時代遅れかどうかをしつこく聞いたとか、階段から幾度か転げ落ちたとか、はてはまんが家を廃業して医者を開業しようかという弱音もちらりとのぞかせたりするとか、さらりと描かれてはいますが、かえって切ない思いが伝わってきます。
さらにこの後1973年に自らの関係する会社が倒産してしまって、普通の人なら八方塞でお手上げになるのですが、「ブラックジャック」で転機を迎え、以前にもまして八面六臂の活躍をするわけです。もっとも、このことは自伝には描かれていません。ぜひともこの後の自伝も読みたかったのですが。
ちょっと気になったのは少年まんがにこだわり続けるという宣言があるのですが、後の青年まんがへの活躍はどう考えていたのでしょうか。映画好きの手塚さんがヌーヴェルヴァーグはあまりお好きではなかったのも興味深かったですね。
この手塚さんの自伝は現在角川文庫の一冊となっているようです。
by BigBrother
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