客に激しい戦いを挑むラーメン屋Dのこと 2003.8.15

 いずれの商売も客と店主の対決の側面がある。中でもラーメン店の対決色はいちだんと濃い。店主は己の信ずるところを頼みに客を唸らせ、感嘆の声を上げさしむことを誇りとする。対する客は看板を掲げるに値するかを物見高く判定せんと押しかける。
 とある町のラーメン屋Dの店主はことあるごとに客に挑む。ここの開店は夜である。しかし、店を開いていてもシャッターを下ろしていることが多々ある。わざとなのである。客はシャッターを上げ、中へ入った後再びシャッターを下ろす。気の弱い人間はここで挫折する。
 第1関門を乗り越えたら、いよいよ真の対決となる。何気なく大盛りを頼もうものなら、出てきたラーメンの麺の多さに驚く。よくよくあたりを見回してみると、それぞれ麺の量が違っている。どうやら、客によって麺の量を変えているらしい。まず、この客は腹が減ってそうだと店主が思ったら多くするようだ。そして、店主はラーメンのどんぶりを手渡しながら、さてこの麺が食べきれるかな?と挑むようなまなざしをする。それはまぎれようもない店主のお客に対する挑戦である。挑まれたお客は何が何でも受けたたつぞという気持ちになるから不思議だ。どんぶりが空になる。なんともいえぬ和やかな雰囲気が流れる。
 あるときカップルの特に男のほうがラーメンについて物知り顔にグタグタ言っていた。そして二人に出されたのは二玉は確実に入っているだろうラーメンだった。まず女がギブアップした。これなら軽いなどとほざいていた男のほうも、やっぱりだめだわ、とぼそりと呟いた。すぐさま店内にはしらけた空気が流れた。他の客の冷たい視線が次々にカップルを貫く。店主の勝ち誇った態度。きまずくなった二人は勘定を済ませると逃げるように店を出て行った。ここでは、客同士店主とここの客の対決を熱く見守っているのだった。
 今日もラーメン店Dの対決は静かに激しい。

by BigBrother

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