西村滋「お菓子放浪記」理論社  2004.2.29


「お菓子放浪記」  読もう、読みたい、読まなければと思っている本はたくさんあるのですが、なかなか予定どおりには行きません。それでも今回2冊書名を懸案のブックリストから消すことができました。それは山中恒「とべたら本こ」と西村滋の「お菓子放浪記」です。これはどちらもテレビドラマの原作でした。テレビっ子で、そこそこ読書好きだったので、原作があるということで読みたいと思ったのでした。
 「とべたら本こ」のほうは学校の図書室に入っているのがわかり、テレビドラマ放送直後に読んでいました。「お菓子放浪記」は縁がないというか、切実に読もうという気がなかったのか、しばらくすると忘れてしまい、まあいいかの領域へと片足突っ込んだ状態になっていました。
 最近行きつけの古書店で「お菓子放浪記」見つけ、これを機会に読むことが出来ました。著者の「なかなか面白い」というのが感想です。太平洋戦争末期から終戦後間もない時代を、孤児同然の主人公がたくましく生きてゆく姿を描いています。
 主人公は著者の体験を色濃く映しているということですし、他の登場人物も実際のモデルがいるとのことで、自伝的な要素もあるらしいですが、とにかく、この小説が優れているのは主人公に感情移入しやすいことにあると思います。物語が終わっても、主人公の行く末が気になって仕方がないのです。
 じつはこの「お菓子放浪記」は1994年に続編が、さらに、2003年に完結編が出版されて、三部作完結ということになりました。
 後の二作品とも興味深いエピソードを描いているのですが、私には小説としては出来の良いものには思われませんでした。読めば知らずと引き込まれてしまう第一作に比べると、どうしても見劣りしてしまいます。説明ぽさが物語のおもしろさを打ち消してしまっているように思えます。
 ただ、まえにもまして主人公の行く末が気にかかります。読者に主人公にたいする強い関心をいだかせる点では大成功の作品だと断言できます。さらに後日談を描いてほしいと、というのが私の読後の感想です。

by BigBrother  

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