「私のおすすめCD」1997.4.12

 東芝EMIが行なっていた1950年代のブルーノートの一連のジャズレコードのCD化が、 先月3月で終わりました。これで、4000番代、4100番代、1500番代のすべてがCD化されたことになります。

 この企画はブルーノートレーベルのレコード番号の順番に発売して行くというもので、以前に発売されたものとも重なるのものも多いのですが、1500番代は音質が良くなったということで、私も何枚かを購入しました。ただし、その違いが明確になるにはそれなりの再生システムが必要なので、私の1万程度のCDラジカセではどっちがどうともはっきりしませんが。

 この中には私がジャズに開眼することになったソニー・クラークの「クール・ストラッテイン」@があります。この中の「ディープ・ナイト」がそのきっかけとなった一曲です。それこそ今まで何百回聞いたか分かりません。サイドメンの演奏も文句無くすばらしいのですが、リーダーのソニー・クラークのピアノが印象深いのです。ある批評家によれば、そのピアノは「指がもつれるような」弾き方であると、あら捜し的な指摘をする人もいます。確かにその通りかも知れませんが、それだからといって「ディープ・ナイト」がひどい代物かというとそうではありません。それは心の琴線を不思議なほどかきならすのです。テックニックが優れているにこしたことはないでしょうが、ただジャズが巧さだけで終わらないところにジャズの魅力があるのではないでしょうか。それはクラシックの声楽家と演歌歌手とを対比してみれば良いかとも思います。もとより両者を差別する気はありません。歌心をきっちりと抑えていなければ、クラッシックであれ、演歌であれ、人の気持ちを打たないでしょう。

 このソニー・クラークを追いかけて、次に気に入ったのがハンク・モブレーのリーダー作「ハンク・モブレー」Aです。サイドメンにもちろんソニー・クラークが演奏しています。ですが、それよりも、ハンク・モブレーとカーティス・ポーターの演奏が圧倒する一曲目の「マイティ・モー・アンド・ジョー」が素晴らしいの一言につきます。さらにおなじくモブレーのリーダー作「ソウル・ステーション」Bは一時期何度も聞きました。
 さて最近購入した1500番代のものでケニー・バレルの「ブルー・ライツVOL.1」C、「ブルー・ライツVOL.2」Dはいいですね。ティナ・ブルックスのごりごりしたテナー・サックスは演歌のコブシまわしのように訴えてかけてきます。アート・ブレイキーのドラムが合うんですね。彼のドラムは、大胆で、かつ繊細にもうちわけることができるのです。ただブルー・ノートレーベルで残念なのは、ピアノトリオが圧倒的に少ないということです。名盤の「ジ・アメイジング・バド・パウエルVOL.2」E、「ソニー・クラーク・トリオ」Fを始めとして、ザ・スリー・サウンズやホレス・パーランなどたしかにあるのですが、私が愛聴するビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」G、ハンプトン・ホーズノ「VOL.3:ザ・トリオ」H、ジョニー・コーツ・Jrの「ポートレイト」I、アート・テイタムの「ザ・テイタム・グループ・マスターピーシーズ」Jようなものは残念ながらありません。

 この2月、3月にビクターから発売されたドットやアーゴ・レーベルを中心としたシリーズには長い愛聴に耐え得るピアノトリオがたくさんあります。「ロライン・ゲラー・アット・ザ・ピアノ」K、「ジ・イン・クラウド・+2」L、「ドドズ・バック!」M、「ブレイキン・イット・アップ」Nは全部御薦めです。なかでも「ドドズ・バック!」はすばらしいテックニックを有するハードバッパーの演奏が魅力的な作品です。一曲目のオリジナル曲、テンポを意図的に微妙にずらした「メロー・ムード」から惹きつけられます。自由自在にしなやかに動くまわる指捌きが容易に想像できます。それが、硬質なタッチのなかに、軽妙さを感じさせるものとなっています。腹の底に響いてくる太いベースの音もスピード感をもっています。
 とにかくピアノトリオの好きな人は上記の内いずれかには満足することと思います。




「クール・ストラッテイン」@
アート・ファーマー(tp)、ジャキー・マックリーン(as)、ソニー・クラーク(p)
ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
=曲名=
1:クール・ストラッテイン
2:ブルー・マイナー
3:ジッピン・アト・ベルズ
4:ディープ・ナイト



「ハンク・モブレー」A
ビル・ハードマン(tp)、カーティス・ポーター(ts)、ハンク・モブレー(ts)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds)
=曲名=
1:マイティ・モー・アンド・ジョー
2:フォーリング・イン・ラブ・ウイズ・ラブ
3:バッグズ・グルーブ
4:ダブル・エクスポウジャー
5:ニュース



「ソウル・ステーション」B
、ハンク・モブレー(ts)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・ブレイキー(ds)
=曲名=
1:リメンバー)
2:ディス・アイ・ディッグ・オブ・ユー
3:ディッグ・ディス
4:スピリット・フィーリン
5:ソウル・ステーション
6:イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー
(一曲目はのびやかな曲想でこれからの季節にぴったりです。最後の曲は物悲しく、最後を飾るにふさわしい)



「ブルー・ライツVOL.1」C
ルイ・スミス(tp)、ティナ・ブルックス(ts)、ジュニア・クック(ts)、ケニー・バレル(g)、デューク・ジョーダン(p)、ボビー・ティモンズ(p)、サム・ジョーンズ(b)、アート・ブレイキー(ds)
=曲名=
1:イェス・ベイビー
2:スコッチ・ブルース
3:オータム・イン・ニューヨーク
4:キャラバン



「ブルー・ライツVOL.2」D
ルイ・スミス(tp)、ティナ・ブルックス(ts)、ジュニア・クック(ts)、ケニー・バレル(g)、デューク・ジョーダン(p)、ボビー・ティモンズ(p)、サム・ジョーン ズ(b)、アート・ブレイキー(ds)
=曲名=
1:ロック・ソルト
2:ザ・マン・アイ・ラブ
3:チャキン
4:フィンピ



「ジ・アメイジング・バド・パウエルVOL.2」E
バド・パウエル(p)、カーリー・ラッセル(b)、トミー・ポーター(b)、ジョージ ・デュデュビエ(b)、マックス・ローチ(ds)、ロイ・ヘィンズ(ds)、アート・テイーラー(ds)
=曲名=
1:リーツ・アンド・アイ
2:オータム・イン・ニューヨーク
3:アイ・ウワント・トゥ・ビィ・ハッピー
4:イト・クッド・ハップン・トゥ・ユー
5:シュァ・シィング
6:ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームズ
7:グラス・エンクロウジャー
8:コラッド・グリーンズ・アンド・ブラック・アイ・ピーズ
9:オバー・ザ・レインボー
10:オードリー
11:ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
12:オーニソロジー
取っ付きにくいバド・パウエルですが、この一枚は入門としてはいいかも知れません。
実を言えば、私はバド・パウエルのよさはそれほど分からないのですが・・・・。



「ソニー・クラーク・トリオ」F
ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
=曲名=
1:ビ・バップ
2:アイ・ドントゥ・ホワット・タイム・イテゥ・ワズ
3:トゥ・ベィス・ヒット
4:タッズ・ディライト
5:ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ
6:アイ・リメンバー・エイプリル
(2曲目と5曲目が気に入っています)



「ワルツ・フォー・デビー」G
ビル・エバンス(p)、スコット・ラファロ(b)、ポール・モチアン(ds)
=曲名=
1:マイ・フーリッシュ・ハート
2:ワルツ・フォー・デビー
3:ディテューア・アヘッド
4:マイ・ロマンス
5:サム・アザー・タイム
6:マイルストーン
7:ワルツ・フォー・デビー
8:ディテューア・アヘッド
9:マイ・ロマンス
10:ポギー
(静かに高まりスウイングしてゆくエバンスのピアノ、聞けば聞くほど味のでるラファロのベース、繊細なモチアンのブラッシング。ピアノトリオの一つの極地でもあるのがこの一枚ではないでしょうか)



「VOL.3:ザ・トリオ」H
ハンピトン・ホーズ()、レッド・ミッチェル()、チャック・トンプソン()
=曲名=
1:サムバディ・ラブズ・ミー
2:ザ・サーモン
3:エンブレイセブル・ユー
4:アイ・リメンバー・ユー
5:ナイト・イン・チュニィジア
6:ラバー・カム・バック・トゥ・ミー
7:ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームズ
8:ビリー・ボーイ
9:ボディ・アンド・ソウル
10:クールィン・ザ・ブルース
(脂ののりきった演奏で押しまくります。ほとんどがスタンダード中のスタンダードなのが取っ付きやすくしています。ウルサ方からは今「一つ精神せいが足りない・・・・」とケチをつけられるかもしれませんが)



「ポートレイト」I
ジョニー・コーティス(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、ケニー・クラーク(ds)
=曲名=
1:レッツ・ゲト・ロスト
2:ディング・ドング・ザ・ウィッチ・イズ・デッド
3:イフ・アイ・ラブ・アゲイン
4:ラブ・イズ・ザ・スイーティスト・シング
5:リトゥル・ガール・ブルー
6:シャ・ガ・ダ・ガ・ダ
7:コーティス・オーツ
8:ビトゥイーン・ザ・デヴィル・アンド・ディープ・ブルー・シー
9:スカイラーク
10:マイ・ラッキー・デイ
11:イフ・ゼアー・サムワン・ラブリィア・ザン・ユー
(地味ですが、洗練された洒脱な演奏が選曲のよさとあいまって聞き飽きません。5曲目と8曲目と9曲目が好きな演奏です)



「ザ・テイタム・グループ・マスターピーシーズ」J
アート・ティタム(p)、レッド・カレンダー(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)
=曲名=
1:ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングズ
2:モアー・ザン・ユー・ノウ
3:サム・アザー・スプリング
4:イフ
5:ブルー・ルー
6:ラブ・フォー・セイル
7:イズント・イット・ロマンティック
8:アイル・ネバー・ビー・セイム
9:アイ・ゲス・アイル・ハブ・トゥ・チャンス・マイ・プランズ
10:トリオ・ブルース
(一聴して、その卓越した技巧に驚きます。しかもその技巧がいやらしくなく、まったく自然に聞こえます。1曲目、7曲目が好きな曲です)



「ロレイン・ゲラー・アット・ザ・ピアノ」K
ロレイン・ゲラー(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、エルドリッジ・ブラッツ・フリーマン(ds)
=曲名=
1:クラッシュ・バイ・ナイト
2:クローズ・ユア・アイズ
3:ミステリー・シアター
4:ザ・ブルー・ルーム
5:エヴリバディズ・ブルース
6:マダムX
7:ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー
8:ユー・アンド・ザ・ナイト・アンド・ザ・ミュージック
9:ポインシアナ
10:ホワット・ア・ディフェレンス・ア・デイ・メイド



「ジ・イン・クラウド・+2」L
ラムゼイ・ルイス(p)、エルディ・ヤング(b)、レッド・ホルト(ds)
=曲名=
1:ジ・イン・クラウド
2:シンス・アイ・フェル・フォー・ユー
3:テネシー・ワルツ
4:ユー・ビーン・トーキン・バウト・ミー・ベイビー
5:ラブ・テーマ・フロム・スパルタカス
6:フェリシダージ
7:マザーレス・チャイルド
8:カム・サンデイ
9:ザ・パーテイーズ・オーヴァー
(リラクゼイションできる楽しい一枚です。悪く言えばいささか能天気かも知れません)



「ドドズ・バック!」M
ドド・マーマローサ(p)、リチャード・エヴァンス(b)、マーシャル・トンプソン(ds)
=曲名=
1:メロー・ムード
2:コテージ・フォー・セール
3:エイプリル・プレイド・ザ・フィドル
4:エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー
5:オン・グリーン・ドルフィン・ストリート
6:ホワイ・ドゥ・アイ・ラブ・ユー?
7:アイ・ソート・アバウト・ユー
8:ミー・アンド・マイ・シャドウ
9:トレイシーズ・ブルース
10:ユー・コール・イット・マッドネス



「ブレイキン・イット・アップ」N
バリー・ハリス()、ウイリアム・オースティン()、フランク・ガント()
=曲名=
1:オール・ザ・シングズ・ユー・アー
2:オーニソロジー
3:ブルージー
4:パスポート
5:アレンズ・アレイ
6:エンサレブル・ユー
7:エス・アール・オー
8:ストレンジャー・イン・パラダイス
(本当に地味な一枚です。1曲目と最後の曲が御薦めです)

by BigBrother

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