「しつこくまたまた酒の肴考」 1997.6.14

 というもは、日本人がこよなく慈しんできた魚のひとつです。「海老で鯛を釣る」「腐っても鯛」などの慣用句はこうした鯛の面目躍如というわけです。ですから鯛の刺身は御馳走の王座を維持してきました。 しかし、この鯛も日本人が珍重するほどには、他では有り難がられないと聞いています。当地では高級魚も他所では大衆魚というわけです。しかも近来、日本人の嗜好が比較的こってりしたものに傾くようになり、日本酒党に舌鼓を打たせてきた鯛の淡泊な味わいは、以前ほど貴ばれなくなったようです。
 のあっさりした鯛にもこってりしたところがあります。それは皮の部分と頭です。特に頭の部分には、弾力のある皮の下にゼラチン質がたっぷりとあります。この頭を堪能するには、兜やきが一番ふさわしい料理法です。油で揚げるのは鯛の淡泊さをそこないますし、汁ものにするとゼラチン質と旨みとが汁にとけだし身がぱさぱさになってしまうのです。兜やきにした場合にはこってりしたゼラチン質と端麗な身の味わいが渾然一体となり、そのうまさは格別です。骨は多いのですが、簡単に身からはずれて扱いやすく、丁寧に骨をしゃぶっていると「鯛の鯛」といわれる小骨がでてきます。目玉独特の食感も嫌がらずに積極的に楽しみましょう。兜やきという肴には遊び心さえ感じます。このすばらしい肴に初めて出会ったのは見附市柳橋の「海老名」でした。


海老名の箸袋

by BigBrother


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