「しつこくまたまたまたまたまたまた酒の肴考」 1997.6.24

 朱鷺。「とき」と読みます。日本では佐渡の「トキ保護センター」に最後の一羽が飼育されています。日本以外に生息している中国でも数十羽が観察されているにすぎません。絶滅が憂慮されている種の一つです。
 この朱鷺が絶滅に直面している一つの原因に乱獲がありました。江戸時代が終わり日本が激変するなかで、日本の各地に生息していた朱鷺はさまざまな理由から殺されました。羽は詰めものに、あるいは肉は食用に供されました。
 今から10年ほど前にこの朱鷺の肉を味わった人の話を聞いたことがあります。60歳すぎのおばあちゃんでした。佐渡の出身で、近所には山下清の生家があったということです。ただ、本人が食べたわけではなく、子どもの頃におじいちゃんから聞いたということでした。
 肉はうまかったそうです。その料理法はもっぱら汁ものでした。このお汁に手をのばすのを躊躇させる一つの事柄がありました。朱鷺の肉のせいで汁が真紅に染るのです。明るいところではさすがに箸をつけるのがためらわれたそうです。性能のいいランプがあった頃にも関わらず、ほの暗いローソクの灯のもとで食事を摂ったということでした。
 朱鷺はもちろんのことですが、山椒魚も絶滅が心配されています。こうした失われゆく種たちのことを考えると、思わず知らず、いつかは滅亡の危機が降りかかりかねない人類に思いをはせてしまいます。そんなときに、ふさわしい一杯はオンザロックですね。年代物のウイスキーが琥珀色に輝いています。

        かたはらに秋ぐさの花かたるらくほろびしものはなつかしきかな  若山牧水
by BigBrother

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