「こりずにまたまた酒の肴考」 1997.7.16

 き鳥の香ばしい匂いが黄昏の町通りに漂っています。なによりも気楽に呑むことを重んじるなら、スーパーマーケットで焼き鳥を買って帰宅するという手があります。ただ、安くて美味い縄のれんの焼き鳥を知っている者には、これが同じ焼き鳥の範疇に入るとは到底思えません。スーパーのものは糊のように粘る甘ったるい濃いタレがかかっているものばかりです。しかし件の焼き鳥が惣材売場からいまだに姿を消していないことからすれば、根強い人気を保っているのでしょう。確かに心から美味いと声を上げれるものではありませんが、ジャンク・フードに特有のどこか病みつきになってしまうようなところがあります。ああした味付けは出来合いのレトルトパックのハンバーグなどにも見られるので、おそらくもっとも無難な味付けなのでしょう。
 れんをくぐりました。ここは安くてボリューウムがあります。箸ほどもある串が使われています。やや固めで、アクさえ感じられる肉は、かえってこれぞ焼き鳥といった喜びをいだかせてくれます。近頃の焼き鳥はブロイラーを使ったかのような癖のない柔らかな肉のものが増えています。確かにその上品な味わいと食感は文句のつけようがありません。ただ私が求める焼き鳥には必要でない余計な要素です。例えば、砂ぎものうまさはその野趣に富んだところにあります。
 き鳥のメニューの定番には鳥以外の肉があります。中にはトン足が乗っている店もあります。一回このトン足を興味本位で注文したところ蝋細工のような本当に豚の足の先がだされたました。私はややもてあましてしまいました。トン足を美味しく食する秘訣はいまだに知りません。
 こはタンが美味いので、焼き鳥の他に必ず注文します。ツキダシで呑んでいる合い間に、焼かれている肉が立てる音と香りが喉を鳴らせます。店主が用意した皿にねりがらしを添えました。待つのはもうすぐで終わるようです。


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