「あきずにまたまた酒の肴考」
1997.8.30
秋刀魚がでまわりはじめました。初物は御祝儀相場もあって高値をよびますが、秋刀魚もその例に洩れません。大衆魚もこの時ばかりは下にも置かぬもてはやしようです。
秋刀魚といえば、落語の「目黒のさんま」が思い浮かびます。この落語の面白さは江戸時代の強固な身分制度を背景としています。当時のはあらゆる場面(例えば言葉使い、服装、髪型など)でそれぞれがその分をわきまえることが要求されていたわけで、それを極端に言えば、食い物もそれぞれがその分にふさわしいものであることがもとめられていたわけです。ですから、お殿様が下々が口にするような大衆魚の秋刀魚を食べること自体が笑いを誘うのです。
強火の遠火で秋刀魚が焼き上がった時のあの何とも言えぬ香ばしさは例えようがありません。脂の乗った身がたてるしゅうしゅという音。お殿様が秋刀魚を恋しがったのがまったく納得されます。
秋刀魚で「目黒のさんま」とならんで思い起されるのが佐藤春夫の「さんまのうた」でしょう。このさんまのうたが創作された背景は谷崎潤一朗との間に起こったあの有名な事件がありました。一方この事件は谷崎潤一朗に「蓼喰う虫」を執筆させました。このことについては松本清張の「昭和史発掘」で触れられています。興味の方はそちらをお読み下さい。
秋刀魚は焼き魚として味わうのが一番でしょうが、刺身も悪くありません。秋刀魚の刺身は長岡では一般的ではありません。ひかりものに共通する日もちの悪さと、やはりなによりもその強すぎるほどの脂のクセが刺身を敬遠させることになってきました。ただこの脂も、秋刀魚が海流とともに紀伊半島まで南下する頃にはほどよく抜けるので、この地方では秋刀魚は刺身とされることも多かったと言うことです。薬味はワサビでもかまいませんが、どちらかといえばショウガが合うようです。
秋刀魚は焼くのが一番手軽です。ただ、よりうまく焼き上がる秘訣は火にかける20分程前に塩を軽く振ることです。これによって魚の身から余計な水分がでてくれ、引き締まった食感が味わえます。それではゆく夏をおしみながら、まだまだ冷えたビールを傾けることにしましょう。
by BigBrother
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