山岸涼子『妖精王』全5巻白泉社
1997.9.16
山岸涼子の名を知ったのは今から14年ほど前、『日出る所の天子』のことです。このまんがはその当時連載中でした。
その時初めて少女まんがというものを知りました。それ以前は少女まんがを読んでいる同性の連中を宇宙人にでも遭遇したかのように眺めていましたが、山岸涼子を中心に、話題少女まんがをちょいちょいのぞくようになりました。もちろんそれほど熱心にではありませんでしたが・・・。『妖精王』はこの『日出る所の天子』の次に知った山岸涼子の作品で、この時すでに完結していました。
私が少女まんがを敬遠していたのは、少女まんがの常套手段とされていた幾つかの道具立てでした。
- 登場人物がまったく非現実(まんがですから当たり前ですが)な美男美女であること。特に美男はまったく女性にしか見えません。
- あの針金の様な細さと八頭身など目ではないスタイル。もちろん異常なほど足が長い。
- 舞台設定が外国であること。
- ほとんどの恋愛もの。しかも、話がまわりくどいこと。
『日出る所の天子』は、私の少女まんがのイメージからややずれていました。この作品は聖徳太子を主人公にしたまんがで、歴史に材をとっています。歴史のことは詳しくないのですが、それでも史実を丹念に調べた上で、大胆かつ違和感なしに(歴史が御専門の方からすればそうとは思われないかも知れませんが)仕上げているという印象を受けました。初めて感心した少女まんがでした。
『日出る所の天子』はその後何度か目にする機会がありました。『妖精王』のほうは、14年ほど前に見て以後、再読することがありませんでした。内容の細部はほとんど忘れていたのですが、ただ「中々読ませてくれるなあ」という印象だけが残っていました。
久しぶりで古本屋でこのまんがを見つけました。今回読みはじめると、『妖精王』の主人公の名は爵と書いて、ジャックと読ませるなどなにやら背筋を寒くさせる予感さえあったのですが、ぐいぐいと引き込まれました。私を敬遠させる少女まんがの要素を多く持ちながら、読ませるのは冷静に処理された感を与える絵のためでしょうか。冷たい様式美さえ感じます。山岸涼子の作品はどれもどろどろした情念のぶつかり合いを取り上げていますが、透明感溢れる不思議な絵に説得されてしまいます。

by BigBrother
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