コリン・ウィルソン「ルドルフ・シュタイナー」河出文庫 1997.12.25

 ルドルフ・シュタイナーというはた目からすれば極めてエキセントリックな人物を比較的公平な立場から記述した伝記です。なぜシュタイナーがそうした印象を与えかねないのかといえば、この人物が霊的世界について数しれぬ講演を行ない、膨大な著述を書いたからです。
 コリン・ウィルソンのルドルフ・シュタイナー観の基礎となっているのは、

      シュタイナーが書いたり語ったりしたことで、彼を二十世紀の他のあらゆる思想家と区別していることは何であるか。これへの答えは、本書の第1章でかなり詳しく論じたあの認識のうちにひそんでいる。あの認識とは、「霊界」というものは実は人間の内面世界にほかならぬ、という認識である。シュタイナーは事実上こう言っていたにひとしい。鳥は空の生き物でり、魚は水の生き物、蚓蚯は地の生き物なのだが、人間は本質的に心の生き物であり、人間の真の故郷は自分の内部にある世界なのだと。〜略〜。さらに、シュタイナー哲学の中心的な主張は、この内面の領域こそ「霊界」にほかならず、ひとたびこの領域に入ることをおぼえれば、この領域が外面世界の単なる想像的反映ではなく、それ自体独立した実在性を有している世界であることを人間は実感する、という考えなのである

 というものです。こうした観点から、シュタイナーの人間的な弱さをも視野に入れて伝記が著わされています。
 おもしろく一気に読めます。シュタイナーの同時代人の公正な批判によって語らせている部分も興味深いですね。作家のカフカが反感を覚えつつも何度かシュタイナーの講演を聴き、シュタイナーに面会したことを日記に書き留めていたを初めて知りました。それと発狂後のニーチェと面会した際の印象を記しているシュタイナーの文章も、コリン・ウィルソンの引用によって初めて読むことができました。
 このウィルソンの著作は、ルドルフ・シュタイナーという人物を通して、単なる生物的で本能的存在に終わろうとせず、それを越えでてある高みへと昇ろうと志向する複雑な人間という存在を実に鮮やかな手際で浮き彫りにしています。

by BigBrother

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