諸星大二郎「地獄の戦士」集英社 1997.12.26

 諸星大二郎氏のまんがを強いて分類すれば、怪奇ロマンということになるでしょうか。古代日本や中国が舞台に選ばれるかと思うと、日常の中の非日常性を描き、あるいは未来社会を、はたまた過去が現代にシンクロしたりとその健筆を振るってきました。
 この「地獄の戦士」はそうした多彩ぶりが発揮されている短編集です。表題ともなっている「地獄の戦士」がいちばん長く、49頁ほどあります。この作品をはじめ、諸星大二郎氏の作品は読後も長く尾を曳くインパクトにあります。それは知らないうちに深くささって抜きがたくなった棘の痛みのようです。しかし、いったん棘に気づいたら、違和感を覚えずには済まないように、諸星大二郎の作品から受けた印象は次第に生自体の不可解さへとつながっていくように思われます。
 この短編集の中で気に入っているのは「ユニコーン狩り」と「桃源記」です。「ユニコーン狩り」はファンタジー色濃い作品ですが、それでもどこかしらグロテスクな味わいがあります。「桃源記」は実在の人物、陶淵明の「桃花源の記」に想を得ているようです。「地獄の戦士」に次いで46項という力作です。諸星大二郎氏は「無面目」や「太公望伝」など、材を古代中国にとり、多くの佳作をものしてきましたが、ここでも素晴らしい作品に仕上がっています。中国古典を驚くほど自らのものとし、面白い読み物にする才能には感心します。
 この「地獄の戦士」は現在品切れだと思いますが、個々の作品は他の作品集に収録されていると思います。また古本屋でも案外手に入るかと思います。機会がありましたらぜひ一読を御薦め致します。

 追加。サンコミックスにも諸星大二郎の初期作品集がありました。「夢見る機械」です。まだ日本や中国の古代は扱われていませんが、現在の作品にも大いに通ずる確固とした方向性が感じられます。それに加えて思うのは、カバーレイアウトのいつもながらの素晴らしさです。


by BigBrother

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