「TODAY!」(1965) 1998.1.16

    1. BAG'S GROOVE
    2. THE GOOD LIFE
    3. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
    4. SATIN DOLL
    5. BLUESETTE
    6. THRIO
    7. BROTHER,WHERE ARE YOU
    8. POLKA DOTS AND MOONBEAMS
    9. WILLOW WEEP FOR ME
    10. SAUDADE

 ハード・バッパーのピアニスト、バド・パウエルが後進たちに与えた影響ははかりしれなく、魔法使いの呪いによって蛙にかえられた王女よろしく、彼らのスタイルにはバド・パウエルの影が忍びより、その呪縛は白馬の騎士、ビル・エヴァンスによって解かれることになる、という極めて穿った見方があります。
 バド・パウエルの演奏はスピード感に溢れ、聴くものにおのずと緊張を強いる点にその真骨頂あるとされていますが、これは1940年代後半から50年代はじめにかけてのバド・パウエルの輝かしい絶頂期においてです。糸は張りつめたままに置かれるべくもなく、その後のパウエルの変貌は周知のところです。
 バド・パウエルばりのバップ・ピアニスト、アル・ヘイグの絶頂期は、影響を受けたバド・パウエルとその時を同じくしているといわれています。そして、そのスタイルが変化する時期も重なるようです。識者によれば演奏は甘美となり聴きやすくなったということです。
 さてこの「TODAY!」においてもすでにバップ・ピアニストとしての面影は薄れてしまっていると言われています。軽快で明晰な演奏はそれだからこそ、私にとってハード・バップ入門となりました。
 確かにこの1枚は甘口に感じられます。スタンダードが多いのもそうした一因となっているのでしょう。しかし、あらためて聴き込むと、どこかに微妙に狂っているようなところがあり、不安感を覚える演奏です。1曲目の「バグス・グルーヴ」はまさしくそうした演奏ですし、4曲目の「サテン・ドール」は明るい曲想がかえって奇妙なずれを感じさせ、言うにいわれぬ雰囲気が漂っています。線が太いようでいて細く、正調のようでいて乱調であるという、アンビバレンツの持つ魅力があります。

by BigBrother

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