日野日出志「蔵六の奇病」集英社
1998.1.21
初めて目にした日野日出志氏の作品名は定かではありませんが、「水の中の楽園」だったように記憶しています。これはおそらく井伏鱒二氏の「山椒魚」からヒントを得たのではないかと思うのですが、その趣は相当異なります。ペーソス漂う井伏氏の作品に対し、日野氏の作品にはグロティスクなユーモアが溢れていました。
日野日出志氏の絵の特徴は極めて独特です。土着的なユーモアさえ感じるタッチが特有の恐怖と怪奇に満ちた残酷さを醸しだしています。
この短編集「蔵六の奇病」は、一編をのぞきすべて「昔がたり」の設定となっています。これが日野氏の絵と実にマッチしていて、残酷「日本昔話」とでも言える世界を形成しています。もっとも昔話は本来残酷であると聞きますが。
表題作の「蔵六の奇病」はもちろん力作ですが、私がもっとも好きな作品は「人魚」という作品です。この主題は「絶対的な美」ということだと思いますが、不思議なほどの静謐な余韻が読後に残ります。
by BigBrother
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