梅本さちお「軍隊教師」日本文芸社
1998.2.9
以前紹介した「さらば、わが青春の『少年ジャンプ』」の冒頭は、あるまんが家の訃報で始まります。その人物とは少年ジャンプの創刊当時において、中堅作家であった梅本さちおさんです。先の著者によれば、梅本さちおさんは少年ジャンプのシステムに強い束縛を感じ、自らの希望でジャンプの執筆を降番したといいます。この「軍隊教師」にはそうした自由を愛し、自分の描きたいものを描くのだという心情が溢れています。
表題からして、おおよその内容が思い浮かびますが、実際は予想していた熱血教師ものとはいささか趣を異にします。
主人公ガンテツこと岩場鉄は教員免許を取り上げられているのですが、問題のある生徒を引き受けるということであちこちの学校を転々とするという設定です。主人公本人は教職こそが自分にふさわしいと思い、彼と深く関わった人々もそう認めますが、次第に主人公自身が自分の居場所が分からなくなる、それは言い換えれば、狭い意味での教員という在り方に疑問を抱いていくのです。それは最後の方で、「松南学院にきて自分は初めて、生の人間に出会った感じがします。学院長とそしてみんなと知り合い、それだけで幸せです。これから学院に帰り荷物を持って出かけます。あれだけ復帰を願った教職なのに、旅に出てさまよう方が自分に合っているんですね」の主人公の言葉に伺えます。
梅本さちおさんはこの主人公を最初から最後まで静かな諦念を湛えた風貌で描きます。主人公に仮託しつつ、自らの心情を述べていられるのでしょうか。その眼差しには、描きたい作品がさまざまな事情から発表することが困難になっていく状況をしっかり見据えている梅本さちおさん自身の感慨が表れているとするのは、とんでもない誤解でしょうか。心に語りかけてくるような絵を見てると、人生の哀歓をおぼえます。いい作品ですね。
by BigBrother
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