ぼくのオンリィ・イエスタディ「80年代思いだすままに」 その7
口裂け女、人面犬、その他の噂。
1998.2.19
79年に口裂け女の噂が長岡でも囁かれました。「実際に見た人もいるのだ」「この前長崎屋の角に立っていた」などという、伝聞もありました。全国を駆け抜けた噂でした。そのグロテスクで突拍子もない話によって、全体としては一笑に附されるような内容でしたが、どこかまじめに受け取られていたような気がします。
私は中学生の妹からこの噂を聞きました。この噂はびっくりするほどのディテールを持っていました。荒唐無稽であるとは思いましたが、この噂を生みだした顔の見えない人々の想像力にいい知れぬ不気味さを感じたものです。その頃弟は小学校の野球クラブで帰りが遅く、帰り支度の際噂をみんなで笑いとばしながらも、コワゴワと帰宅したということです。
この口裂け女の噂の内容は私が妹から聞いた限りでは次のようでした。
三人姉妹の一人であり、ある理由から整形手術をすることになったが、これに失敗した結果、口が耳まで裂けてしまい、これを隠すためにマスクをしている。さみしい夜道で通りすがりの人をつかまえて、まずはマスクのまま「私ってきれい」とたずね、どういう答えが返ってこようが、逃げる相手をオリンピック候補になった駿足で追いかけて、ついには相手の顔をハサミできりつける。日中は人の家の押入に隠れている、というものでした。
この噂はそれぞれの地域でいくつかのヴァリエーションとディテールがあったようです。基本的には上のようだったと思います。長岡でこの噂は一か月ほど盛んに飛び交っていたようでしたが、その後急速に下火になっていきました。
こうした口裂け女ほどの規模とディテールさは持ってはいませんでしたが、80年代にもいくつかの噂が流れました。
その中でもっとも著名なものは1980年代後半の人面犬の噂です。これは人の顔をそのまま首から載せたような犬が目撃されたというものです。しかもその目撃の中には高速道路で運転するドライバーの車を追い越していったというものもありました。
この噂のでどころはある青年雑誌の連載マンガであったと思われます。それは私がこの噂が広まる前に、そのマンガを目にしているからです。もちろん、噂が先でマンガ後であるかもしれませんが。このマンガのキャラクターの人面犬が自動車のCMに使われたこともありました。
他にもさらに1980年代末、「ドラえもん」や「サザエさん」の悲惨な結末の噂です。これらの噂はのでどころはどちらについても、マイナーな雑誌に描かれたパロディーからだそうです。「ドラえもん」の結末についての噂は、実はあの楽しい物語は植物人間になったのび太の夢の中の出来事だというものです。ただどちらの噂も首都圏が中心で、全国的にはなりませんでした。
噂の中にはさまざまな理由から故意に流布されるものもあるわけですが、それでもあの「口裂け女」の噂のように広まってしまうのがなぜだか私には分かりません。そういえばこの噂の前に、「なんちゃっておじさん」の噂話がありました。もっともこれはその当時ニッポン放送のタモリ氏がDJをつとめていた深夜番組のコーナーから火が付いたように記憶しています。放送作家たちが番組をもりあげるため仕掛けたのだということも耳にしたのですが。
「口裂け女」の噂については後日談があります。これは実はある大学の研究室が噂の広まり方やその変容について研究するために、故意に流したものだというのです。ただしこの方も噂なのですが。
by BigBrother
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