川崎のぼる「どんぐり大将」日本文芸社
1998.3.26
川崎のぼるさんの名前で連想するのは、「巨人の星」と「いなかっぺ大将」ですが、どちらにせよ今どきの子供たちは知らないまんがとなってしまっているのではないでしょうか。当時はひたすら感動しまくっていた「巨人の星」の度を越した熱血・シリアスぶりは今思い起せば、悪く言えば噴飯ものですが、再考するに「いなかっぺ大将」に通ずるユーモアがあるのではないかと、一人感心しています。
「いなかっぺ大将」は本当に面白かったまんがです。TVアニメ化されましたが、こちらもよかったですね。そういえば、主人公の風大左ェ門が柔道の新しい技、キャット空中三回転を教わる、にゃんこ先生を愛川欽也さんが吹き替えをしていました。ちなみに主人公は動物と話せるという特技の持ち主です。
「いなかっぺ大将」はもう面白くなければならないような設定がなされていました。主人公はたぐいまれな柔道の才能に恵まれているのですが、お寝ショはするわ、音楽を聞くと我を忘れて踊ってしまうわ、お花ちゃんとキクちゃんという二人の美少女の間でどたばたするわ、キクちゃんをめぐる恋仇でもある西はじめとは何かというとくだらない意地の張り合いをするわ、もうありとあらゆるところで笑わせてくれました。最近文庫版で読めるようにもなっています。
この「どんぐり大将」も「いなかっぺ大将」の直接の系列に連なる作品です。新潟と長野の県境の小さな村が舞台です。ほとんどの村人が農業でくらし、中には炭焼や猟をおこなう者もいます。
主人公の轟一番は全校あわせて28人しかいない小学校の分教場(この言葉もたぶん死語ですね)の5年生です。内容はアウトドアライフを満喫している「いなかっぺ大将」といったところです。まんがだから当然ですが、絵に描いたようなのどかさの中で、数々のギャグかまされます。
自給自足の完璧な小宇宙のこの村も最後には村の山向こうに建設されている巨大ダムのことがちらっと顔をだし、いずれこの予定調和も破綻を来すことが暗示されます。
川崎のぼるさんの職人芸ともいえるうまさを実感する作品です。

by BigBrother
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