「とにかくまたまた酒の肴考」 1998.4.20

古典落語  まったく何事でも「ただより安いものはない」わけですが、うまい話にはえてして落とし穴があるもので、「ただより高いものはない」のもまた事実。もっともまるっきり金のかからないことなど、せちがらいこのご時世にあろうはずはなく、結局は納得できる金額ということになるのでしょうが。
 それでも安くてしかもいいものは探せばけっこうあるもので、食い物でも同じこと。なかでもおからはその代表格です。そういえば、おからを卯の花(うのはな)というのは一般に東日本で、西日本では雪花菜(きらず)と呼ぶのだと聞いたことがあります。  もちろんおからはそのままではさほどうまい代物ではありません。ひと手間かけなければならないわけです。これはおからに限らず、おふくろの味としてもてはやされる料理一般に共通していますね。
 おからを使ったクッキー、ケーキなどもあるそうですが、代表的なのはおからの炒めものではないでしょうか?これは人参、ごぼう、鳥ひきにく、しいたけ、玉葱のなどの具を適当にしたごしらえし、これに別にしたごしらえしたおからを加えて炒め、最後に味を整えるものです。
 この場合、ひと手間はおからのしたごしらえにあります。これにはおよそ2通りがあります。ひとつはおからを充分に炒って、更にとき卵を加えて炒る仕方。もうひとつはおからをとにかく蒸かしに蒸かして、触れたら火傷をするほどに熱くする仕方。これらをすることでおからの青臭さが消えるわけです。
 おからというと思いだすのが落語の「千早振る」です。これは百人一首の「千早振る神代もきかず竜田川からくれないに水くぐるとは」を知ったかぶりが珍解説を繰り広げるおなじみの一席です。

    おまえはね、しろうと考えに、この竜田川てえのをなんだと思う?〜略〜こりゃおまえ、相撲取りだよ〜略〜なにしろ吉原でひと目ぼれした竜田川が、千早んところへ通ったが、千早、なんつった?「わちきはいやだ」って、ふったろ?だから「千早ふる」じゃない〜略〜で、妹女郎の神代さんに話をしたが、神代も言うことをきかないから「神代もきかず竜田川」となる。三年後に、女乞食となりさがった千早が、(相撲をやめて豆腐屋になっていた)竜田川の門辺へ立って「おからをくれ」ったが、竜田川、やらないだろう?だから「から、くれない」。井戸へドブーンと、とびこみゃ、「水くぐるとわ」以下略。=角川文庫「古典落語(長屋ばなし・下)」より=

 子供の頃はどちらかというとそんな好きではなかったおからですが、年のせいかこれがめっぽううまい今日この頃です。

by BigBrother

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