仁賀克雄「ロンドンの恐怖=切り裂きジャックとその時代=」ハヤカワ文庫 1998.4.29

ロンドンの恐怖  切り裂きジャックのことについてはちらっと耳にしたことがあったのですが、詳細はほとんど知らりませんでした。この著作はこの猟期的な殺人事件に明確なイメージを与えてくれます。事件の時代背景も簡にして要を得て、ちょっと学校で習った世界史のことを思いだしながら、読了しました。
 この事件は1888年にイギリスで5人の女性が相次いで殺害され、迷宮入りした犯罪のことです。とにかく当時の警察、マスコミ、大衆の反応が興味深く綴られています。警察内の分裂、好奇心丸出しの大衆、特にマスコミの扇情主義と無責任ぶりは現在でも身近に思い当るので、なおさら面白く感じました。切り裂きジャックが伝説化した一端はマスコミに寄るところも大きいようです。
 この著書から初めて知ったことはいろいろありましたが、切り裂きジャックの研究家をリッパロロジストということもその一つです。フィクションではありますが、シャーロック・ホームズの研究家をシャーロキアンと呼ぶのと似ていますね。
 この著書(単行本出版1985年、文庫版出版1988年)によれば、この事件についてはすでに語りつくされた感が否めないとされています。つまり推理のための推理をかきたててくれる怪事件として、好事家を惹きつけるだけで、次第に忘れられるのではないかとも著者は指摘します。ただ文庫版の13章の「切り裂きジャック伝説」の末尾で「1988年はジャックが登場して百年目に当るので、再びイギリスではジャック・ブームが起こっている。次にジャックがクローズ・アップされるとすれば、スコットランド・ヤード(イギリスの警察のこと)のジャック関係の一件書類が解禁になる1993年のことだろう」と述べていますが、いったいどうなったことやら。たぶんさほど目立ったことはなかったのでしょうが。
 とにかく面白い一冊です。

by BigBrother

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