「とにかくまたまたまたまた酒の肴考」 1998.5.7

蕗の椀  コロポックルはアイヌ語で蕗の下の神様を意味すると聞いたことがあります。蕗のとうがさかりを過ぎた今、弟分の蕗が初夏の強い陽射しの中で独特の高い香りを放っています。妖精ならずとも、しばらく芳香の蔭に静かに佇んでいたい気分になります。
 良質の蕗は清洌な岩清水の湧きでる地味豊かな一帯に群生します。蕗の葉のにわかごしらえの椀で汲む水にはさらなる涼が加味されています。苛立っていた喉の渇きが癒され、くつろいだ気分にさえなります。
 蕗も蕗のとうに勝るとも劣らぬ優れた酒の肴の一品となります。あるいは、蕗のとうはどうもという人でも、蕗は好きだという人の方が案外多いかも知れません。
 私は蕗は煮物が一番だと思いますが、蕗を煮物に使うにはその下ごしらえがちょっとたいへんです。
 蕗をきれいに洗うまではさほどでないのですが、皮をむくのが一苦労です。この仕事を終えると、蕗のシブで指先がみどりがかった茶色になっています。丹念に洗ってもなかなか落ちません。
 丁寧に皮をむいた蕗を茹でた後、水に晒してアク抜きします。この後で煮物に使えば蕗の香りと快い歯ざわりとを堪能できるのです。
蕗の煮物  したごしらえが面倒だという人には、きゃら蕗という手があります。蕗のよごれを丹念に洗い流すのは一緒ですが、この後適当な長さに切りそろえて、佃煮を作る要領で、醤油、酒、みりんでゆっくり煮上げればいいのです。もっとも焦がさずじっくり煮上げる方がたいへんかも知れませんが。
 今日は蕗と筍の煮物を作りました。煮物は熱いのも美味しいですが、蕗は一端冷めてからの方が、かえて香りが引き立つような気がします。
 5月とは思えぬ暑気も夕方からの雨で納まってきました。蕗の煮物を肴にきゅーっと冷えたビールをいただくことにしましょうか。

by BigBrother

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