花輪和一「護法童子」全2巻 双葉社
1998.5.20
著者の「あとがき」によれば、「護法童子」は「信貴山縁起絵巻」にインスピレーションを得ているそうです。そう聞いた上で、マンガの背景を見れば、確かに絵巻物に描かれた風景と似ているところがあります。ですが、このマンガの絵の雰囲気は、蔓荼羅に代表されるような密教美術に近いような気がします。といっても、ぼくは仏教に造詣があるわけではないのですが。平均的日本人が密教で思い浮べるイメージを映像化しているような画風と言えば、適切でしょうか?
舞台は平安末期らしく思われます。さまざまな怪異な事件を護法童子が解決してゆくという設定です。「今昔物語」のような説話文学をマンガ化したと言えますが、個性的なタッチによって日本人のメンタリティーをあざやかに具体化し、しっかり著者独特の世界を作りだしています。むしろ密教的な世界といった方がいいかも知れません。
不思議なあじわいがあります。どこかしらグロテスクな陰影があるのですが、それにもましてなつかしさを覚えます。絵巻物と説話文学の伝統を受けている作品に、読者の日本人としての集合的無意識が共鳴するのでしょうか?マンガという表現手段の懐の深さを実感する作品です。
by BigBrother
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