「続々々・失われた時を求めて〜(長岡版)」 1998.5.25

地図 森立峠〜守門岳〜比例トンネル
 日本は資源に乏しいといわれます。確かに採算にみあうほどの量には恵まれてないのですが、一方で石油からウランまで実に様々な種類の資源を産出しています。

 ここ長岡では石油がとれました。市内にも草生津が石油に由来する地名として残っています。

 最近まで東山で石油の採掘が行なわれていました。今はどうなっているのかを見に、五月の連休の快晴の午後サイクリングがてら、でかけました。

 八方台へ向かう急な上り坂は運動不足の体には相当きつく、息に血の味が混じるほでした。成願寺を過ぎてすぐに自転車を押すはめになりました。休憩で一息つくと、新緑を渡る風に爽快さを覚えます。藤の花房が甘く香っていました。

 すれちがう自動車からの物珍しげな視線を感じながら、どうにか坂を越えて長岡から栃尾へ。栃尾の軽井沢から比礼へと道を進みます。右手には守門岳が初夏の陽射しに少し霞ませた長閑な山容を見せています。ログハウスや別荘風の建物が所々に目につきます。

 比礼のトンネルを抜けると、すぐ両脇から二つの小道が尾根へと向かっています。これらの道は途中でつながっているので、どちらを選んでもかまわないことが後で分かりました。

鉄骨の塔

 まず右の山道から登っていくと、所々に鉄骨の塔が姿を現します。おそらくこれが石油を汲み上げるための施設なのでしょう。さらに先へと進むとハンマーを取り付けたような、建造物が立っていました。なんとなく民芸調の素朴ささえ漂っています。地面を掘削するためのものでしょうか。この何倍もある巨大なものを以前世界で有数な産油国の映像で見かけたことがあります。現在でもこうした仕組のものが使われているのかは知りません。今栖吉奥の山裾では帝国石油の試掘が行なわれています。こちらは段違いなほどメカニックですので、おそらく、東山の一連の施設は前近代的なもののように思われます。
 いずれにせよ、稼動しているようには見えませんでした。

事務所

 比礼のトンネルからしばらく道をくだると、石油関係の事務所があったのを思いだしました。ちょうど辺りで山菜をとっている人から聞いたところによると、「昨年までは事務所には人が詰めていたのだが、今年は姿がないようだ」とのことでした。確かに人の気配はなく、ジープや自動車はもはや修理ができないほどに錆びつき、壊れたままです。散在する施設を眺めると、見捨てられ、置き去りにされたものの持つ悲哀感がひしひしと迫ってきます。活況の頃もあった筈ですが、もはや夢の跡という印象を拭いきれません。朽ちかけているのは、当時これ以上ないほど最先端だった建造物です。ときならぬ真夏を思わせる草いきれのなかで、死に場所で安らう象のように佇んでいます。新緑に埋もれていく施設を見ると、ただ忘れ去られるためだけの痕跡となりゆくのが実感されました。


油田付近の草花

by BigBrother

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