藤子不二雄(藤本弘)「エスパー魔美」全9巻 小学館 1998.6.7

エスパー魔美1  藤子不二雄氏は藤本弘と我孫子素雄氏のふたりのペンネームであるのは周知のことですが、お二人はずいぶん前から別々に活動をしていたのもよく知られたことでした。いつのことだったか年代ははっきりしませんが、それぞれの仕事を、同じペンネームにそれぞれの苗字のイニシャルを付けて明確に区別するということが、ニュースにまでなったことを覚えています。

 藤本氏の仕事といえば、あらためて述べる必要がないほど有名なのが「ドラえもん」です。「ドラえもん」はテレビアニメとしても人気を得てきました。その理由は様々あるでしょうが、原作のまんがの面白さにもあると思います。古典的なはっきりした起承転結の展開とこれを引き立てる気の効いたアイデアが実に調和しています。ドラえもんの場合には、そのアイデアは主としてドラえもんのポケットから出される不思議な道具にあると言えます。

 ドラえもんは、ほとんどが一話完結の形式をとった短編作品と言っていいかと思います。ドラえもんに限らず藤本氏の短編作品のうまさには舌を巻くほど感心します。

 この「エスパー魔美」もそうした藤本氏のアイデアのよさとストーリ展開のうまさとが一体となった作品です。基本的な構造は「ドラえもん」と変らないのですが、主人公の超能力者の佐倉魔美をちょとおっちょこちょいな愛らしい少女とし、サポートする天才的なほど頭脳明晰な高畑君もやぼったいが正義感あふれる少年にして、どちらにも読者が好感を持てるようにするなど、当然なのでしょうが、丹念なキャラクター設定をしているなあという印象を受けます。

 最近NHKBS放送の「BSのまんが夜話」の今年の1月逝去された石ノ森章太郎氏の「サイボーグ009」を取り上げた回において、いしかわじゅん氏が、トキワ荘の漫画家たちが最近相次いで亡くなったり、体調を崩されていくのを見聞きするのにある種の感慨を覚えざるをえないと語っていたのが心に残りました。

 藤本氏も昨年亡くなられました。現在も圧倒的な人気作品、「ドラえもん」は今後も主要作品として多くの人々の心に刻まれていくのは間違いありません。ただ残念なのは、「エスパー魔美」を始めとした他の藤本氏の作品が書店にさほど見かけないことです。ぜひ「どらえもん」以外の作品も店頭に並ぶことを願っています。


by BigBrother

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