古本屋に入ると、聞き覚えのある曲が流れていました。憂愁の翳がにじむサックスの音色からハンク・モブレーだとすぐに気がつきました。曲名は「IF I SHOULD LOSE YOU」です。この題名を英文法では確か反実仮想とかいったような気がします。「万が一君を失ったら」ということなのですが、帰結の文は当然わかりきっているから省略されているのですね。 それはさておき、久々に「SOUL STATION」を通して聴きたくなりました。この作品はとにかく最初と最後の曲が不思議なほど相呼応しています。二つの曲名から、恋人から別れましょうと切りだされている男性を想像してしまいました。男性としたのは、その方が感情移入がしやすいからですが。「想い出してくれ」と楽しかった日々を共有したことを相手に振り返らせ、さらに「万が一君を失ったら、死んでしまうかもしれないよ」と相手に哀訴している、そんな場面が思い浮かんできます。そのうえハンク・モブレーのしっとりしたサックスはさえない男の泣き言めいた繰り言を連想させます。そういうふうに聴くと、途中の曲は二人の回想シーンのイメージとなるでしょうか。時折愚痴っぽいため息にも似たサックスが混じり込む。いささかこじつけですが。 ウィントン・ケリーの地味ですが小粋なピアノがハンク・モブレーの演奏を引き立てています。アート・ブレイキーのドラムも心憎いまでにはまっています。ここしばらくまたちょくちょく聴くことになりそうです。 by BigBrother
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