「とことんまたまたまたまたまた酒の肴考」 1998.8.3

「茄子

 「秋茄子は嫁に食わすな」には2、3の異なった解釈があるようですが、いずれにせよ、秋の茄子がうまいということでは一致しています。しかし、茄子の旬は夏にこそあるような気がします。実はれっきとした理由が存在します。「なす」と「なつ」は、音が似通っているからなのです。もちろん冗談ですが。

 淡泊なようでいて、アクの強い茄子ですから、取れたてをしっかり調理することが肝心です。「いやいや、浅漬けこそ新鮮な茄子を堪能するには一番じゃないのか!」という声もあるかと思います。こうした意見も当然なのですが、酒の肴ということでは、メインディッシュの一品たりえるとは言い難いものがあります。もちろん、茄子の浅漬けが大好きな人にとっては事情は異なるでしょうが。

 暑い時には、かえって熱いものが食指を動かすものです。もっとも、横にはひとしきり大汗をかいているジョッキの生ビールがあるということが、必要条件なのですが。そうとなれば、焼き茄子はこの条件にぴったりとくる酒の肴です。

 焼き茄子が難しいのは、盛りつけまでの過程で、いかに茄子のオツユをこぼさないかです。後はひたすら焼くだけのシンプルな料理ですが、熱い湯気の立ち昇るできたてを、おろしショウガと醤油だけで食するのですが、このうまいことといったら。ハリのある皮を真っ黒に焦がすことによって、淡泊な茄子は複雑な風味を帯びるからなのでしょう。大げさな表現をするなら、即席の燻製と言っていいのではないでしょうか。

 さて、広辞苑によれば、先の俚諺は「秋なすび早酒(わささ)の粕につきまぜて棚におくとも嫁(嫁が君の略、即ち鼠)に食わすな」の和歌に基づくのだそうです。もとは姑と嫁とのことではなかったのですね。ちっとも知らなかった。

by BigBrother

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