高階秀爾「近代絵画史」/フロマンタン「オランダ・ベルギー絵画紀行」
1998.8.14
大家さん、ちょっと相談したいことがありやして。
なんだい、熊さん、変に神妙じゃないか。
実は、できちゃいまして。
そうだろうと思った、お前は日頃から汚くしてるからね、バアさんや、できものに効く軟膏もっといで。
いいえ、できたのはレコでして。
レコとはなんだね、聞いてるよ、「熊のヤロウまたこりずに」って町内ではえらい評判だ。
えへ、知っていました。
お前ね、嬉しそうな顔するけど、褒められているんじゃないんだよ。
実は変った所でデートしよってことになっちまいましてね。
どこだい?
近頃デートスポットとして人気だとかいう美術館ていう代物でして。
うん、いいじゃないか、無心に絵を見て心を洗われておいで。
そこなんですよ、絵なんかあんまり無心でしたから、なにが何だかさっぱりなんで、物知りの大家さんのことですから、絵を見るコツってなもんをご教授願いたいと思いやして。
別にコツなんてありゃしないよ、ひたすらじっくり眺めてくればいいだけさ。
大家さん、デートでしょ、お互い黙っているなんてことじゃ困るんで、「熊さん、見かけによらず、芸術に理解あるわ、見直しちゃった」ってことにならなければ、どうしょうもないじゃないですか。
お前ね「生兵法は怪我のもと」ということ知ってるかい?
なんですかい、それ?
生半可だと、かえって痛い目をみるということさ。
そんなこといったって、やっとここまで漕ぎつけたんでさあ。
じゃ、あらかじめ美術館へ行って、見てきておいで、それと、まずはこの高階秀爾「近代絵画史=ゴヤからモンドリアンまで(上・下)」中公新書、っていう本を貸すから、じっくり読んできてみな。
なんですかいこりゃ?
その本の見返しに書いてある通りだよ。
え、なになに「人はしばしば、思いがけない絵に接してとまどい、時にはこれが絵画かとさえ疑う。しかし、一見してわけの判らぬ抽象絵画や不気味なシュールレアリズムの作品も、決して画家の気紛れや偶然の産物ではない。ルネサンス的世界像の崩壊に伴ない、近代絵画の流れの中で生まれるべくして生まれてきたのである。このような情況を、19世紀初頭から第2次大戦まで、近代的画家の業績と美学的理念、表現方法を通じて明らかにする」、なるほどねえ。
お前、わかったのかい?
ちっともわからねえ。
絵のあらましが分かるってことだね、有名な画家の案内にもなっているし、便利な本だね。
なるほどね、これを読んでいったら、そこそこのことが言えるって寸法ですね。
そんなところだがね、余裕があったら、このフロマンタン「オランダ・ベルギー絵画紀行(上・下)」岩波文庫に目を通してご覧、人はこんなふうに感想を持つのだというこが書いてあるから、それにしてもお前は本当にマメだね。
by BigBrother
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