ちばあきお「プレイボール」全22巻 集英社  1998.8.28

ちばあきお「プレイボール」22巻 表紙  ちばあきお氏のまんがを初めて目にした際、登場人物たちの表情の印象から絵の下手な作家であると早合点してしまいました。ちばてつや氏の弟と知っていたので、無意識のうちにてつや氏の絵と比較していたのかも知れません。

 後に「キャプテン」をじっくり読むことで、これがまったくの思い違いだと気づきました。ちばあきお氏の画風はまんがの話の内容にこれ以上ないほどぴったりとしています。どこにでもいる平凡な少年たちを語るためにあえてとられた画風だと思うようになったからです。

 「キャプテン」にしろ、「プレイボール」にしろ、そこにはヒーローは登場しません。むしろ、アンチヒーローとしてのヒーローすら現れないほど、ヒーローを拒否しています。つまり、ちばあきお氏の読者は間違っても「我々はあしたの谷口である」と口にすることはないのです。

 ちばあきお氏の「プレイボール」は「キャプテン」で登場した谷口君が弱小の墨谷高校野球部で活躍し、甲子園を目指すという内容です。墨谷野球部は他校に比べて劣る戦力を徹底した練習で補わなければなりませんし、辛うじてチームが編制できるほどの少数で戦い抜かねばなりません。つまり墨谷はいってみれば最初から不利なわけです。ですから、試合では、相手をよく知った上で、最後まで諦めず粘り強く戦っていくだけです。

 このような画風とストーリーですから、作品の第一印象は地味そのものです。しかし、読み進めるに従い、ぐいぐいと引き込まれるのですから、その力量は並大抵のものではありません。

 「キャプテン」の方も合せて読まれることをお進めします。

 ただ、残念なのはちばあきお氏の早すぎる死のことです。もしも、存命で健筆を揮われていたなら、また違った作品世界を描かれていたのではと思われてなりません。

by BigBrother

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