ちばあきお「キャプテン」全26巻 集英社  1998.9.29

ちばあきお「キャプテン」26巻表紙 集英社  「キャプテン」の面白さは、「プレイボール」を知っている人にはお馴染みです。それは地味ながらも、丹念に描き分けられたキャラクターの活躍にあります。この2作品は前者が後者の後日談の関係にあります。「プレイボール」では谷口君のもと墨谷高校野球部は戦力を整え、夢の甲子園へと挑んでゆきます。「キャプテン」では、中学時代の谷口君をはじめとした、墨谷二中のキャプテンが全国中学野球大会をめざして奮闘します。
 この作品の真骨頂は谷口君、丸井君、イガラシ君、近藤君、それぞれ個性的なキャプテンのもとで、チームのカラーが変わってゆくところにあります。

 この「キャプテン」に出てくる、谷口は、ハニカミ屋で決断力に欠けますし、丸井は義理人情にもろく、すぐ感情に走ります。イガラシは、プレイはうまいのだが、クールというか冷たい。近藤は、自己中心的で、子どもっぽい=ちばあきお氏(26巻あとがきより)

 「ハニカミ屋で決断力に欠ける」谷口くんは不思議と人望があります。みずから熱くなりながら、他のナインの心に火をつける人物に描かれています。次代キャプテンの丸井くんの心酔ぶりはやや度外れてはいますが、充分に説得的です。この谷口くんのリーダーシップもと、墨谷二中の選手やかって戦ったライバルたちからも、手駒がそろって、いざ勝負!という構図が「プレイボール」なのですが。
 さらに、「義理人情」の丸井君や、「クール」なイガラシ君、そして近藤君によってそれぞれのチーム作りのもと全国中学野球大会を目指します。
 本当にこの作品がよくできているのは、それぞれのキャプテンの性格も、全国中学大会を制し、さらに常勝(このフレーズは好きではないのですが)してゆくために、必然的なものとして考えられているということです。しかし、こしらえものに感じさせず、まったく自然なところがすばらしいのです。
 ただ、「自己中心的で、子どもっぽい」近藤君がキャプテンに選ばれたことは、読者にとって理解し難いのではないのかという作者の心配からでしょうか、22巻に次のような説明的な台詞があります。

選手Aおまえの兄貴(キャプテのイガラシ)どうしてまた近藤さんなんかキャプテンにしたんだろう?
選手Bじつはおれもそれを聞いたことがあるんだよ
選手Aなんていってた
選手B外にだれがいるだってさ
選手Aほかに?そういや、牧野さんじゃ、ピリピリしすぎるし、曽根さんや佐藤さんじゃ神経が細すぎるかもな
(〜略〜)
選手C神経がねえよりましだぜ
選手Bけど、前年度優勝校という重圧を牧野さんや曽根さんが耐えられるかな
選手Cけっし適格者とは思えないけど、やっぱ、近藤さんになるかな

 この台詞も後輩同志のおしゃべりとして、実にさりげなく交わされるので、説明っぽくありません。
 こうしたことが巧みに描かれ、キャラクターがそれぞれの精彩を放ちつつ、さらにそれぞれ特色あるチームが形成されるところにこのキャプテンの空前絶後の名作たるゆえんがあると思います。

by BigBrother

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