ぼくのオンリィ・イエスタディ その27
パリ留学生殺人事件
1999.6.22
カインの殺人以来、犯罪のなくなったことはないのですが、80年代の犯罪は70年代の終わりに兆していた劇場型の傾向を明確にしたことだと、識者は指摘しています。
もともと犯罪者は悪事が露見しないように、他人の目を意識せずにはいられません。しかし犯罪者の中には自らが捕まらない限りその犯罪が世間にできる限り知れ渡ってほしいと考える者もいるそうです。現代のマスコミの発達とその過剰な報道合戦の中で、あたかも劇場に立つ主役のように、観衆である世間の眼差しの中で犯行を重ねるというのです。
これが正しいのかどうかぼくには分からないのですが、「グリコ・森永脅迫事件」、「連続幼女殺人事件」をその例として挙げられると、なるほどと思います。
1981年にパリで日本人留学生が起こした殺人事件もそうした劇場型犯罪にあてはまるように思います。
この事件を日本のマスコミが競ってとりあげたのは、日本人留学生が被害者の人肉を食べたという点にあります。幾つかの調理方法で食べたと報道されましたが、すき焼きにしたという情報には、なぜだか納得させられたような気がしたものです。
ぼくにとってずっと衝撃的だったのは、この日本人留学生が精神的な理由により、犯行の割りにはたいした刑にもならず、パリの刑務所から日本へと強制送還されたことでした。確かこの強制送還も例によって、マスコミによる加熱した中継が行われました。
後にこの人物は自らの犯行を綴った「霧の中」という本を出版しました。これもワイドショーの恰好の話題となりました。その中の人肉を食べる件が何度も取り上げられました。
さらに、この人物が出所して数回何らかの事件のコメンテーターとしてマスコミに登場した時は奇異の念に打たれたものでした。
その後劇作家の唐十郎氏がこの事件をもとに書き上げた小説が著名な文学賞を受けたこともありました。とにかく何かと話題の多かった事件でした。
by BigBrother
[TopPage]
[New]
[BigBrother's Room]
[80年代]
|