「ノースウェスト・スミス」シリーズものともいうべき短編群です。主人公は熱線銃を腰に携え、法の境界で際どい仕事をし、宇宙パトロール隊と派手な立回りをし、宇宙の美女たちに愛の言葉を囁きます。
ただこうしたスペースオペラの胸のスカットする場面は、そうした背景があるのだと簡単に触れられるのみで、ここには描かれていません。短編が取り上げるのは、その冒険活劇の合間の例外的に主人公が巻き込まれた怪異な事件です。それは生と死の二律背反が火
花を散らす緊張感と、腐臭を秘めた耽美な恐怖に満ちています。単純明快な本来のスミスの活動と、幕合劇にも似た事件との落差が設定されているため、話は一段と深みを加えているような気がします。作者の心憎いうまさですね。
どれも一気にその最高潮の場面を読者に堪能させてくれるのも、この作品のよさでしょう。また作品はイメージを大切にしているのですが、一方で、的確の言葉や言い回しを、
場合によっては矛盾する形容を積み重ねて幻想的な世界を構成しているのも、特徴のような気がします。言葉はイメージとともに感情も喚起しますが、この作品はそうした言葉の感情を引き起こす特質を最大限に生かしていると思います。ですから、映像化できそうでいて、映像化したらその魅力が半減してしまう作品です。
実は松本零士氏によるカバーデザインが気に入って買ったのですが、読んだらこれが実に面白かったという次第です。1930年代に書かれているそうですが、古さを感じさせません。
そういえば、この中の一編「黒い渇き」は寺沢武一さんが「コブラ」のなかで参考にしていますね。
by BigBrother
|