こんども酒の肴考
夏ですまたまたまたまたまたまた酒の肴考 今年の3月にアブサンが解禁されたというニュースを聞いたので、遅まきながら酒屋をのぞいてみると、手製の能書でアブサンを謳っているのを見つけました。喜んで買ってきたアブサンをよくよく見ると、実は代用品ということに気づきました。
アブサンはアルコールにニガヨモギの成分を溶かし込んだリキュールです。ニガヨモギのエッセンスを使ったお酒は他にもいろいろあって、有名どころは、マティーニのレシピのベルモットです。ベルモットはニガヨモギを意味するそうです。
アブサンが禁止されたのは飲みすぎると幻覚症状を引き起こすとされたからですが、その原因はニガヨモギとされています。禁止に関しては20世紀初頭の科学的な水準できちんとした判断を下すことができるのか、疑問視する声があったそうです。解禁にいたったのは、ニガヨモギがシロという科学的な根拠がだされた、と聞きました。もっとも、アルコール中のニガヨモギの成分濃度は本物よりも低く抑えられているそうです。
幻覚を起した連中は凡人とかけ離れた、いわゆる天才芸術家たちですから、アブサンのせいだけで幻覚を見たわけでもないと思います。
そういえば、「太陽と月にそむいて」の中で、このアブサンが小道具に使われていました。ディオナルド・デカプリオがアルチュール・ランボーに扮し、おかまを掘るシーンが目を引いただけの、限りなくC級に近いB級映画です。すぐアブサンだとわかったのは角砂糖と水を入れて飲んでいたからです。
アブサンが禁止されると、合法的な代用品が考案されました。その一つペルノは数種類のハーブのエキスを溶かし込んだリキールです。
紛らわしいのがラベルにABSENTEとフランス語で印刷された代用品です。冒頭で私が買ってしまった代物です。本物はABSINTHEとつづります。代用品といってもかなり本物に近いらしいのですが、そこは代用品、本物と決定的な違いが2点あります。まず、アルコール度数が55%の点です。この度数は決して低いわけではないのですが、本物は70%以上あるそうです。この高いアルコール濃度のほうが、幻覚に関係していそうですね。また、使用されているニガヨモギも本来とは違う種類なのだそうです。
ニガヨモギと聞くと、新約聖書でイエスが十字架に磔けにされた場面を思い出します。イエスが絶命する直前にニガヨモギの汁を混ぜた葡萄酒を飲むのですが、どうしてなのかなと今でも不思議に思いますが、この辺にニガヨモギをリキュールにしようとしたアイデアがあったのではないかなぞと、あれこれ考えたりもします。
ところで、このアブサンで物騒な話はしばしば毒殺に利用されたというものです。毒薬を忍び込ませても強いアルコールとニガヨモギの風味で気づかれなかったということらしいですね。それこそ甘く危険な香りということでしょうか。
※http://www.iscb.net/ BB 2005.8.12より