「酒小屋」
「長岡のプレイスポット その6」 1997.11.8
長岡駅前に横断歩道が大黒屋とタクシー会社を結ぶように走っています。タクシー会社に面した歩道を駅を背にしてしばらく歩くと、右へ曲る通路のすぐ角にその酒小屋はあります。カウンターだけの10人ほどで満員になってしまう店です。 おもての「二酒小屋」を一見すると、これが店名と思ってしまいますが、「二」はもともと「和不二」という酒の銘柄を示していたのですが、「和と不」の二文字は落ちてしまって直されてないままなのです。こうした店構えに対する無頓着ぶりは、店内にも充分表われています。古びた椅子は、新品の頃には腰をおろす部分にクッションがついていたようなのですが、今ではまるっきり木製になっています。夏に活躍する2台の扇風機はアブラとホコリで真っ黒になっています。どちもらに古さを通り越して、レトロな印象すら覚えます。
ここはモツ煮込みだけです。ですから注文をとるのは日本酒かビールかの別を聞くためです。柔らかくなったモツ、絹ごし豆腐、こんにゃく、といった具がタライのような銅製の鍋でぐつぐつと煮られています。このモツ煮込みは小鉢ではなく、縁のややそりかえた皿に山盛りにされますが、店主は煮汁がこぼれようが頓着しません。さらにこの雰囲気を味わいたかったら、日本酒を頼んでおきましょう。この銘柄の「和不二」は栃尾の酒です。これはコップ酒でだされますが、夏冬にかかわらず燗が付けられています。酒を温める機械は同じくレトロな雰囲気が漂っています。お約束通りにコップ酒はふち一杯に注がれ、 その受皿にはこぼれた酒が波打っています。 こうしたすべてによって店が醸しだすクセのある雰囲気に魅せられたら、たびたび足を運ぶことになるでしょう。
ここは昼から始まり、仕込を売りつくしたところで暖簾をおろしてしまいます。たいてい6時までには閉っていることがしばしばです。今日は4時に呑んでいます。贅沢なかぎりですね。モツ煮込み一皿とコップ酒2杯で900円でした。店をでると、あたりはすっかり夕暮れです。冬至まであと一月ちょっと。まだまだ陽は短くなっていくのですね。「太陽エネルギーが減少するのだなあ、ウルトラマンも困るだろうなあ」なんてことを思ってしまいました。結構酔っているようです。