升酒
升酒のツウな呑み方を聞いたことがあります。
くれぐれも誤解なさらないように、おそらく正式な呑み方ではありません。というか、作り話であるのが濃厚ですから。
なみなみ注がれた升には盛り塩を添えるのがふつうなのですが、ツウの升酒には影も形もありません。いくらツウぶっても木の香りをウナギの小話みたい嗅ぐだけじゃ、やせ我慢に過ぎない。やっぱり肴がほしいところ。
とぐだぐだしているうちに升に酒がしみこんでいきます。実はこれがみそ。と言いうか肴。やおら、升を噛み、しみだしてくる汁をチュッとすすって、今度は升の中の酒をグビッ。また升を嚙み、チュッと啜って、グビッ。チュッと来て、グビッ。とやって、チュッ。チュッ、グビッ、チュッ、グビッ。升はまっさらより使いまわしの方が風味があって乙なんだとか。ってどうもねーぇ、落語の酢豆腐ばりの話に思えて仕方がないのですが。