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山田正紀「宝石泥棒」角川文庫

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 この「宝石泥棒」は文庫で500ページ近くある長編。三章からなり、SFであり、かつ、魔境もののティストが色濃い作品。

 特に二章がそうなのですが、文学作品のパロディー?になっています。この二章はマクベス、三章は白鯨、一章はなんでしょう?たぶん何かのパロディーなんでしょう。

 面白いですが、私は二章がこの作品の傷になっていると思います。それはあまりに、マクベスの謎によっかかりすぎている印象が強いこと(実際はそうでないのかもしれないですが)。しかも、謎解きが容易に推測される点も欠点ではないかと思います。

 もちろん、この謎解きには、三章につながる重要な伏線でもあり、その点では並々ならぬ手腕をみせていますが、いかんせん、伏線にしてはあまりに派手すぎ、伏線でなく、つなぎのための章だと考えるにしても、この章が描かれることによって、一章と三章はうまく橋渡しがされたかといえば、この安直な二章の構成がせっかくの一章と三章の印象を弱めてしまったし、読後大いに疑問がわくのもこの二章の道具立てにありますし、この道具立てを謎解きのために作り過ぎて、わざとらしくなり過ぎている点もどうにも安っぽく感じられる点ですね。

 三章ではあまりに主人公の振る舞いが無思慮であり、馬鹿げていることも気になります。

 ただ、そうは言っても、おもしろいことはおもしろいですし、逆にきちんと伏線を張り、謎解きも十分したうえで、(二章は依然として疑問の残るままのところもあるように思えますが)結末に見事収斂した快作だとおもいます。魔境ものとしても、十分楽しめますしね。


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