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「夜は千の目を持つ」(1945年) ウィリアム・アイリッシュ(創元推理文庫 )

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ウィリアム・アイリッシュといえば、江戸川乱歩の絶賛した「幻の女」(1942年)が有名なんですが、私もようやく3年ほど前に読みました。この「夜は千の目を持つ」も同著者による一冊。ロマンティックな作風で、いわゆるホームズばりの推理と謎解きを重視した本格探偵小説ものとは違いますが、そこのところがかえって好きですね。

ウィリアム・アイリッシュはジョージ・ホプリー、コーネル・ウールリッチの複数のペンネームを持ち、「夜は千の目を持つ」はもとはジョージ・ホプリーで発表。どの著書のどなたの解説だったか忘れましたが、このウィリアム・アイリッシュは変わり者だらけの作家の中でも、とびぬけて変わり者だったそうで、特にその死に至る経緯は覚悟の自殺だったとしか言えないと指摘されていたのが、印象的でしたね。

私はこの題名の方を以前からジャズの曲名として知っていました。変わった曲名だと思っていましたが、演奏はてんで記憶に残っていません。この著書を読んでから、現金なものでジャズの方が気にかかるの何の。
ジャズの方ではスタンダードナンバーの一曲。多くの名演があります。数曲聞いた中ではジョンコルトレーンがアトランティックレコードで演奏した「夜は千の目を持つ」が現在のところ一番好きですね。


古本屋「かおす書房」閉店

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駅を背にして大手通りから左に三国街道を曲がってしばらく行ったところに古本屋「かおす書房」はありました。以前は殿町踏切近くに店を構え、「コスモス書房」って言ってましたね。
残念なことに先月の4月24日で閉店。32年間の営業だったそうです。長い間ありがとうございました。店主の方とちょっと話しましたが、売り上げは家賃代にもならないそうで今後は店舗はもたずインターネットを通じて注文販売するということです。


村上春樹「1Q84」新潮社

最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 って純文学だろ?って突っ込みを入れたあなた。わかります。でも、エンターティメントとしても楽しめますよね。いずれにせよ、今年の出版界で最大の話題作。
 とにかくうまいですね。これといってすごい斬新な手法を使ってるようには感じませんが、わたしはおーそどっくすなほうがいいです。なんてこといってもおーそどっくすってよくわからんですけれどね。

 クラッシックの曲が共時性を暗示していたり、とにかく様々に張り巡らされた伏線を存分に生かしているのは見事というか、職人技というか、練りに練って仕上げられたという印象を持ちました。

 登場人物が微妙に重なり合い、あるいは微妙にずれ、ちょっと離れてい見るといつしか逆転したり(登場人物青豆が肩入れしている組織と新興宗教の組織の関係)どちらが影か本体かわからなくなったりします。ずっと前にわけもわからずに聞いた事事無碍なんて言葉が浮かんだりしました。

 対照的な釣り合いのしっかりとれた構成を持っていて、作品世界としては極めて堅実で堅固な作品という気がしましす。

 小説ですから、いろいろな読み方受け取り方が可能でしょうが、私はせつない純愛ものとして読みました。永遠のすれ違い物語「真知子と春樹」としてですね。
 作り過ぎの感がなくはないですけれど、とにかく感動してしまった自分がこっ恥ずかしいですね。

 これって続編が出るみたいですけれど、変な楽屋落ちみたいにならないでほしいですね。たぶん大丈夫でしょうけれど。 


清水義範「偽史日本伝」集英社文庫

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 「国語入試問題必勝法」が話題になったのは共通一次試験の登場した頃だったでしょうか。一読皮肉の利いた短編に笑いながらも、「日本の国語教育ってどうしょうもないのではないかなー」って思ったものでした。

 さて、この「偽史日本伝」。おもしろいです。どこぞのSF映画がちらっと頭をよぎるやら、パロディーまんさい。そういえば、この作家半村良の弟子だったんですよね。まさしく嘘部ってなかんじですね。

 日本の歴史の中でこうなったら、あるいはならなかったらという観点で、書かれた連作短編。私が好きなのは平安時代を代表する才女清少納言と紫式部の壮絶バトルの応酬。笑えますね。いいですね。
 


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望郷生 (06/26 20:57) 編集・削除

「偽史日本伝」買ってきました。最初本屋に行った時には、この本が無かったので、同じ作者の「日本語の乱れ」というのが面白そうなので買ってきました。まだ途中ですが、面白いです。「偽史日本伝」も楽しみです。また、いい本を紹介して下さい。

BB (06/27 22:06) 編集・削除

望郷生さん、こんばんわ。
偶然ですが、私も「日本語の乱れ」を先日買ってきて読んでいます。
ちまたでは、村上春樹「1Q84」が100万部を超すベストセラーだそうで、日本人の読書熱の復活なのか、出版会社の広告の勝利なのか、大衆社会の現象を示すものなのかはわかりませんが、読書っておもしろいってことが定着するといいと思います。
 これからは隠れた名作も話題になるといいですね。だいたい、本がすぐ品切れになってしまうのは考えものですから。

望郷生 (07/02 21:09) 編集・削除

「義経」が面白かったですね。まだ全て読み終わってないのですが、あまりにも面白かったので、コメントしたくなりました。歴史というのは、勝者が書くものであって、本当のところはよく分からないというのが本音かも知れませんね。昨今の政変など全くどうなっているのか、今現在を生きている自分自身が分からないのに、何百年後に生きてる人が本当のところを知ろうということは仲々難しいことなのですね。

BB (07/05 21:45) 編集・削除

望郷生さん、書き込みありがとうございます。歴史にドラマを感じとるのは、人間の傾向でしょうか。それをさらに小説に仕立てて、想像力を掻き立ててくれるわけで、絵空事かもしれませんが、なるほどとうなずかせるところも多々あって面白く感じました。

豊田有恒「あなたもSF作家になれるわけではない」徳間文庫

 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 この作品はSF小説ではありませんし、SF小説創作入門でもありません。著書のSF作家として歩みを綴ったものと言った方がいいでしょう。おのずと、舞台裏をのぞかせてくれる貴重な証言に満ちています。下世話に言えば、内輪話を聞く面白さがあります。
 
 手にした動機は1969年に雑誌「SFマガジン」で匿名座談会形式でSF作家を批判したいわゆる覆面座談会事件にふれられていると著作だということ。野次馬根性からです。面白ですね、ごたごたは。さらに儲けものだったのは、かって手塚プロの一員だった著者がその手塚プロをやめることになったいわくのW3事件の顛末も述べられていたこと。

 イニシャルの人物をあれこれ推測するスケベ根性丸出しののぞき趣味を満足させてくれ、何とも興味津々です。
 もちろん、こうしたところを除いても、先に書いたように貴重な資料となっていることは間違いありません。
 
 この文庫の第4章「翻訳の時代」230ページに英語教師だった頃の夏目漱石が学生に「Ilove you」を「月がとっても青いな」と訳すんだと言ったエピソードが紹介されています。
 
 私は初めて耳にする話だったので、「さて、出典は?」と、さっそくインターネットで検索すると、けっこうあります。ただ出典に言及しているものってなかなかないんですね。
 その中で見つけたのは、「大学生のための情報検索術 Blog」の『漱石の「アイ・ラブ・ユー」』の記事。このエピソードを取り上げた文章を調べ上げています。それによれば、

2007年3月18日(日)付けの『読売新聞』朝刊のエッセイ欄「よむサラダ」に
脳科学者・茂木健一郎氏の「赤シャツ」

佐藤健志氏の評論、『未来喪失』(東洋経済新報社、2001年12月、p.168)

2007年1月26日付けの『神戸新聞』の随想「正平調」

小田島雄志『珈琲店のシェイクスピア』(晶文社、1978年9月)

があるそうです。

 そして、この「珈琲店のシェイクスピア」の中で、対談相手の劇作家つかこうへい氏があのエピソードを語っているとされますが、出典は分からないそうです。

 豊田有恒「あなたも~」は1976年から79年にかけて「奇想天外」という雑誌に連載されているので、もしかすると、活字になったのはこちらの方が早いかもしれません。
 「珈琲店の~」の対談が行われたのはいつなのか、該当する「奇想天外」の発売はいつなのかがはっきり分かれば、もっとあれこれ想像をめぐらすことができるのですが。

 さらに、漱石本人が残したメモとして、

「漱石文庫」に残された漱石のメモ書きの中に、ジョージ・メレディスというイギリスの小説家の作品を取り上げて、「"I love you,Signora Laura."―Vittoria p.113.此I love you ハ日本ニナキformulaナリ」と記した一節

があるとのことです。

 結局、出典は明らかでないというのが現状とのことです。

 この漱石のエピソードに加え、二葉亭四迷が「死んでもいい」と訳したというエピソードがあることをネット検索で知りました。先のエピソードと対にした記事もネット上には流れています。
 かなり、マユツバになってきましたね。


半村良「戦国自衛隊」角川文庫

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 ずいぶん前に映画化されて、盛んにCMが放映されていました。「歴史はおれたちに何をさせようというのか」だったかのフレーズをたびたび耳にしました。いわゆる角川映画というやつで、本、映画、CM、音楽、新人俳優の起用などなど、いわゆるメディアミックスで華やかな売り込み戦略を展開して、世間の注目を集めていた頃です。

 映画の方も、小説の方も目にする機会がなかったのですが、今回小説だけは読みました。

 当時はどのようにこの小説が受け取られたかはわかりませんが、文庫で180ページほどの中編は地味な作品です。派手なアクションやお色気シーンを期待する向きには、ちょっと失望する作品かもしれませんが。

 とは言いつつも、設定や展開はなかなかどうしてひねりが効いていて、さすが半村良と感心させられます。ほんと、この人物、多作というか濫作に近いほど書きまくったそうですけれど、外れはほとんどないですね。


小松左京「日本アパッチ族」光文社文庫

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 小松左京と聞くと、「日本沈没」が脳裏に浮かんだあなたは、私と同世代かそれより上の世代ですね。「日本沈没」がベストセラーになったのは私が中学生の頃、1973年で、本持ってるけど、読んでいないんですね。
 そしてこの9年前に書かれたのが、著者の処女長編「日本アパッチ族」なんですな。
 これはおおむね好評をもって受け入れられたようです。解説にそうした反響が紹介されていますが、SFというよりも、風刺小説として受け取られたことがプラスに作用したのでしょう。
 実際にこの小説、社会批判ととれる所が豊富なんです。最初の方で死刑制度や刑罰についての風刺があるし、途中も様々な風刺があって、最後に当時の共産主義国家への皮肉も効かせている。私自身SF小説というよりも、大衆小説としてよくできた小説という読後の印象を受けましたから、この作品を風刺文学として世間が持ち上げてくれることは、作者にとって計算済みだったかもしれませんね。
 マスコミについても皮肉たっぷりに書いているんですが、それを読むにつけ、昨今のマスコミの振る舞いのあれこれを言い当てているようで、興味深いです。
 ところで、この作品には冒頭で人間の尊厳を貫き通して、死んでしまう人物が描かれているのですが、これが全体のカギになってる気がするのですけれど、どうもこれも著者がこの作品の受けを良くしようとした仕掛けの一つなのかって勘ぐってしまいます。
 いずれにせよ、単純明快なSFだったら、当時黙殺されたんではないでしょうかね。考えすぎかな。


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BB (05/05 10:54) 編集・削除

宮城さん、書き込みありがとうございます。
日本沈没にがぜん興味がわきました。探してみましたが、どこぞにまぎれて、見つかりません。図書館に借りにでも行って来ようと思います。
 

未承認 (05/07 22:29) 編集・削除

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BB (05/09 18:36) 編集・削除

 三原和さん、書き込みありがとうございます。
 
 小松左京の八面六臂の活躍をすべて知っているわけではないですが、万博に関係したこともちらっと聞いていました。

 NHKの番組にも出てましたね。覚えているのは富田勲の音楽を本人を交えて、紹介していたFM番組。他にもあったと思いますが、後は全く忘れています。

Master-U (05/10 03:53) 編集・削除

 こんにちは。たった今、読了したところで
このブログを見つけました。
 筒井の処女作「東海道戦争」とノリというか、随所に現れる風刺や落語みたいなオチがそっくりな気がしました。時代の空気なのでしょうか。

BB (05/10 09:40) 編集・削除

 Master-Uさん、書き込みありがとうございます。
 SFが広く認知されていなかったときは、風刺があること(文明批判、社会批判)が出版社から求められたみたいですね。
 小松左京のショートショートを少し読むと、案外ドタバタものがあったりして、筒井康隆のショートショートと似ているところが結構あるという印象を私も受けました。
 

Master-U (05/10 10:30) 編集・削除

 なるほど、そういう時代背景があったのですね。
過去の読書録に「エデンの戦士」を発見しました。高校生の頃、田中光二が好きで片っ端から読んだ記憶がよみがえりました。この手の文庫は大学付属図書館の書庫に大量に退蔵してあったりして「日本アパッチ族」もそこから発掘しました。

BB (05/11 18:11) 編集・削除

 Master-Uさん、書き込みありがとうございます。
 
 田中光二の名前は田中英あ光ー太宰治つながりで知っていました。でも「オリンポスの果実」も田中光二の作品も最近まで知らなかったんですが、ポチポチと読んでます。

 今手にしているのが、「失なわれたものの伝説」まだ読了してませんが、ハードボイルドタッチの作品で、SF作品ではないみたいですね。

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BB (05/17 10:51) 編集・削除

三原和さん、書き込みありがとうございます。
小松左京さんは「果てしなき流れの果てに」(1965)「ゴルディアスの結び目」(1977)など、今も同時代感覚を失っていない作品を生み出されており、先駆性には度肝を抜かれるばかりです。一方で「エスパイ」(1966)のような長編娯楽作品も書いているんだから、ほんと化け物みたいな人ですね。

ホームページ拝見させていただきました。

山田正紀「宝石泥棒」角川文庫

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 この「宝石泥棒」は文庫で500ページ近くある長編。三章からなり、SFであり、かつ、魔境もののティストが色濃い作品。

 特に二章がそうなのですが、文学作品のパロディー?になっています。この二章はマクベス、三章は白鯨、一章はなんでしょう?たぶん何かのパロディーなんでしょう。

 面白いですが、私は二章がこの作品の傷になっていると思います。それはあまりに、マクベスの謎によっかかりすぎている印象が強いこと(実際はそうでないのかもしれないですが)。しかも、謎解きが容易に推測される点も欠点ではないかと思います。

 もちろん、この謎解きには、三章につながる重要な伏線でもあり、その点では並々ならぬ手腕をみせていますが、いかんせん、伏線にしてはあまりに派手すぎ、伏線でなく、つなぎのための章だと考えるにしても、この章が描かれることによって、一章と三章はうまく橋渡しがされたかといえば、この安直な二章の構成がせっかくの一章と三章の印象を弱めてしまったし、読後大いに疑問がわくのもこの二章の道具立てにありますし、この道具立てを謎解きのために作り過ぎて、わざとらしくなり過ぎている点もどうにも安っぽく感じられる点ですね。

 三章ではあまりに主人公の振る舞いが無思慮であり、馬鹿げていることも気になります。

 ただ、そうは言っても、おもしろいことはおもしろいですし、逆にきちんと伏線を張り、謎解きも十分したうえで、(二章は依然として疑問の残るままのところもあるように思えますが)結末に見事収斂した快作だとおもいます。魔境ものとしても、十分楽しめますしね。


光瀬龍「作戦NACL」角川文庫

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 この「作戦NACL」はジュブナイルSFにはいるらしい。ジュブナイルSFの日本における役割というか、由来については本文庫の眉村卓氏の解説が興味深いです。日本のSFについて、興味のある人には必読の一文でしょうね。

 さて、本作品は中編。未知の敵と戦う中学生たちが主人公。表面的はシリアスなんだけれども、じつは巧まれざるユーモアが全編を貫いている作品。

 それを念頭に置くと、きわめて整合的に描かれていることが分かります。「ロン先生の虫眼鏡」はここではどんな生き物を重ね合わせて見ていたんでしょうか。そんなことを感じさせられますし、読後表紙をつくづく眺めると、思わずニヤリとさせられる一編ですね。


田中光二「エデンの戦士」角川書店

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 さて、一見単純な話なのですが、読ませますね。遺伝子組換えの話なぞはかえって今の状況下のほうがリアリティーがあって、発表当時よりも面白く読めるんじゃないかって思います。

 はるか未来と古代と伝説・神話の世界が重なる詩情あふれた空間。しかし、こうした世界を形作っている要因の一つの科学に叡智はあるのか、それとも悪意が潜んでいるのか、問題提起というほどの大それたこととではないにしろ、いつでも読者の鼻先に突きつけられています。
 
 ハッピーエンドなんでしょうけれど、もしやの悲劇的な結末の予感もあちこちに鏤められていて、これが一層の深みを与えています。

 万が一の危惧がほんとになったかは、あるいは杞憂に過ぎなかったのかは、もちろん書かれていないし、そうしたことを考えるのは勘繰り過ぎですが、そうした気持ちにさせる作品であり、余韻の残る作品です。


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