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小松左京「日本アパッチ族」光文社文庫

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 小松左京と聞くと、「日本沈没」が脳裏に浮かんだあなたは、私と同世代かそれより上の世代ですね。「日本沈没」がベストセラーになったのは私が中学生の頃、1973年で、本持ってるけど、読んでいないんですね。
 そしてこの9年前に書かれたのが、著者の処女長編「日本アパッチ族」なんですな。
 これはおおむね好評をもって受け入れられたようです。解説にそうした反響が紹介されていますが、SFというよりも、風刺小説として受け取られたことがプラスに作用したのでしょう。
 実際にこの小説、社会批判ととれる所が豊富なんです。最初の方で死刑制度や刑罰についての風刺があるし、途中も様々な風刺があって、最後に当時の共産主義国家への皮肉も効かせている。私自身SF小説というよりも、大衆小説としてよくできた小説という読後の印象を受けましたから、この作品を風刺文学として世間が持ち上げてくれることは、作者にとって計算済みだったかもしれませんね。
 マスコミについても皮肉たっぷりに書いているんですが、それを読むにつけ、昨今のマスコミの振る舞いのあれこれを言い当てているようで、興味深いです。
 ところで、この作品には冒頭で人間の尊厳を貫き通して、死んでしまう人物が描かれているのですが、これが全体のカギになってる気がするのですけれど、どうもこれも著者がこの作品の受けを良くしようとした仕掛けの一つなのかって勘ぐってしまいます。
 いずれにせよ、単純明快なSFだったら、当時黙殺されたんではないでしょうかね。考えすぎかな。


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