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広瀬正「マイナスゼロ」集英社文庫

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 最近のマイブームはSF小説を読むことです。

 SF作家広瀬正さんの「マイナスゼロ」(7月下旬刊)が復刊されました。広瀬さんは1972年に47歳でなくなりました。現在日本SFの記念碑的作品とされていますが、生前作品に対する評価は低く、二度直木賞候補になりながらも、賞をのがした不遇の作家でした。ちなみに、ただ一人推した選考委員が司馬遼太郎。その後、作品自体も長らく品切れ状態でしたので、残念ながら、知名度も低いかもしれません。

 作品は緻密。ディテールを丹念に描くことで、作品世界のリアルさを作り出すタイプです。この「マイナスゼロ」は昭和初期から、昭和30年代後半までが舞台です。「三丁目の夕日」に代表される昨今の昭和ブームの元祖のような作品で、といっても30年代後半は作品発表からすればほんの数年前で、タイムラグはないと言っていいほどなのですが、平成の今からすれば、ノスタルジックな趣があります。むしろ、このノスタルジックな趣は作品の本質といってよいでしょう。

 内容はタイムマシンもの。作者はこの作品に限らず、時間を扱った作品が多いです。といっても、10年ほどの作家活動による作品は多いとは言えません。この「マイナスゼロ」は集英社文庫版広瀬小説全集全6巻のうちの第1巻。今後集英社は同様品切れだった広瀬作品を月ごとに刊行し、12月に完了する予定です。

 最後に。どの作品をとっても面白さ抜群です。特に「マイナスゼロ」は広瀬作品の代表作、最高傑作とされています。


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