その店は新潟市古町の新津屋小路にある。見過ごしてしまいそうな看板。くるいが出てきた古びたドアを開けると、こじんまりした店内はジャズのレコード、CDが多すぎもせず、少なすぎもせず、程よい余裕で並んでいる。
レコードはいわゆる名盤の類。中古レコードから、新品輸入レコードといろいろある。
CDは新譜中心。新譜といっても普通の店頭に並ぶような類は置いていない。再発ものもあるが、大手レコード会社が取り扱うもの、ブルーノート、リバーサイド、プリステッジ、アトランティックといったものはほとんどない。
新譜の中心はどこかのジャズマニア(といってもこれが知る人ぞ知る有名人なのですが)が熱意と無謀で設立したレーベルから発売されたものばかり。発売数も少ない。こうしたCDの中で特に店主推奨盤には手書きのコメントが添えられている。最近のジャズはどれがいいのかさっぱりわからないので、大いに参考になる。
ここまでくれば、このお店がなかなかの穴場ということがわっていただけたでしょう。中古レコードはこの手のお店にすれば安い。掘り出し物も結構ある。じつは、本当の掘り出し物はここの店主なのだ。
ジャズに対する思い入れが熱い。口を開くや、滔々と論じて、倦むことを知らない。しかも、押しつけがましいところがない。どこか飄々さらりとしている。こちらは聞き役一方なのがだが、わくわくしてくる。ジャズを豊かな表情で語る顔。心から楽しげな柔らかい語り口に耳を傾けていると、時間があっという間に過ぎる。店を後にしながら、次に来ることを考えてしまうのだ。