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黒沢明「影武者」と「乱」

 NHKで黒沢明の「影武者」(1980年)をこの先週の土曜、「乱」(1985年)を22日に見ました。
 
 「影武者」はところどころひきつけられる場面はあったものの、流れが悪い印象を受けました。配役はかならずしも適材適所ではないように思いました。

 ショーケンこと萩原健一、信玄の弟にして影武者の武田信廉山崎努は申し分ない。何と言っても織田信長役の隆大介は光っていました。

 それに引き換え、前半主役、後半傍観者的な目撃者的語り手の役割を演じた仲代達矢はあまりに繊細過ぎて、前半のずぶといユーモアに満ちたエピソードを演じきったとは思われません。それは勝新太郎のイメージで見ていたせいもあります。当初主役だった勝新太郎は監督黒沢明との対立で途中降板。その記憶がおのずと両者を比較させますし、なんといってもプロ中のプロがまず白羽の矢を立てた勝新です。作品のイメージも勝新のイメージに近いものとして進められていたのでしょうから、途中代役の仲代達矢が「配役に合わない」ってクレームをつけてもそれは酷ってもんでしょうね。

 とにかく「乱」は配役がぴったりはまってました。まず今度は仲代達矢がいいんですよね。これは文句付けようがないでしょ。

 植木等の配役は一見お茶らけていますが、かえって不気味で腹黒。もしかしたら、善良な一面を持ち合わせているという複雑な戦国武将を見事に描いていると思わせられます。

 またいいのが鉄修理役の井川比佐志。他の二人の役者さんとほぼ一緒に行動しています。心から主君に仕えているように見せながら、一方で謀議を凝らしているって雰囲気が出ているし、落城とともに討ち死にしないで ちゃっかり逃げおおせているってなことも思わせるしたたかさがあるんですよね。
 
 平山丹後役の油井昌由樹もよかったですね。影武者の徳川家康は?てな印象だったのですが、今回は家臣に格下げですが、存在感はぐっと増していました。

 「乱」は万事が万事こうしたはまった配役、細かい演出。ただしNHKで絶賛していた楓の方原田美枝子が蛾を殺すシーンに関しては、私にはあまりにわざとらしくていただけませんでしたが。でも原田美枝子さんもいいですよね。

 私は「七人の侍」に匹敵する傑作のように思いました。
 


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