ちょとした流行語にさえなった「ミレニアム」は、ラテン語由来で「千年間、千年期」という意味だそうです。日本人にはとって、この「ミレニアム」は区切りが良いということを除けば、たんなる年月の経過にすぎませんが、キリスト教圏の人々にとっては微妙な感情を引き起こす言葉だと聞きました。それは同時に、この言葉が「至福千年、千年王国」を意味するからだそうです。この宗教的ヴィジョンを示す言葉は、私のような非キリスト教徒には、むしろエキゾチックに響きます。
この「至福千年」はさまざまなバリエーションがあるそうです。でどころは複雑らしいのですが、もっとも有名なのは、聖書の「ヨハネ黙示録」が予言する世界の終末とキリストの再臨による神聖統治の記述だそうです。
わたしは「ミレニアム」といわれても、別段これといった宗教的な感情におそわれることはありませんが、決まって思いだすのが、水木しげるさんの「悪魔くん千年王国」です。
ところで、水木しげるさんは同じような設定でありながら、内容が異なる「悪魔くん」をいくつか描いています。
私が最初に出会ったのは、今から二十数年ほど前に「少年ジャンプ」に連載された「悪魔くん」でした。冒頭から悪魔を召喚するするまで、実におどろおどろしい雰囲気に惹きつけられました。不気味な蛙男、不可思議な書名の数々、梟女の幻想的な登場、魔法陣と「エロイムエッサイム」の呪文。少年の夢想をかきたてる小道具がいたるところにちりばめられていました。
後半部分はリアルタイムでなく、ずいぶん後になって読みました。悪魔くんが警官隊の発砲で死ぬ場面が印象的ですね。
この「悪魔くん千年王国」は他のものの中では一番劇画的でシリアスです。水木しげるさんの独特の土着的なユーモアがでていないとも言えます。でも、わたしは水木しげるさんの「悪魔くん」と言えば、これを思い浮べますし、好きな作品ですね。